この大学にはもう一つ重要な拠点があり、それがエマーソン・カレッジ・ロサンゼルス(以下エマーソンLA)だ。映画の聖地であるハリウッドを抱えるロサンゼルスに身を置き、寮を併設したサテライトキャンパスで存分に学ぶことができる。
エマーソンLA受付。
ほとんどのカリキュラムはボストンで行われるが、希望する学生にはエマーソンLAで学期を過ごすことが許される。サテライトキャンパスに来る学生は、卒業直前の者か、LAでキャリアをスタートさせるために滞在する者が多い。学生の一人、4年生のキーラ・ジョンソン氏はこのように言う。「エマーソンLAに来る学生のほとんどは映画かテレビを専攻しています。私も映画専攻です」
エマーソンLAではインターンシップがベースとなったプログラムが組まれており、学生全員がインターンシップに参加する。「朝の9時から夕方5時までインターンに出かけ、帰ってきて夜の7時から授業を受けるという生活です」(キーラ氏)
街へのコミットメントを象徴する建物
エマーソンLAで最も重視しているのは、学生に「経験」を積ませること。つまり、インターンシップで実際に仕事の現場を経験し、卒業後、社会に出ての仕事へスムーズに移れるような仕組みを作っているのだ。このキャンパスを拠点に、ロサンゼルスというプロフェッショナルが身近にいる刺激的な街で暮らしながら、仕事の一端に触れ、学問を学び、24時間いつでも学生同士のコラボレーションを体験できる。
「ロサンゼルスでのプログラムが始まったのは1980年代のことですが、現在のキャンパスの構想が生まれたのは5〜6年前のことです。その当時、ロサンゼルスでは24年間にわたりプログラムを行い、この地域に住むエマーソン卒業生は4000人に及んでいました。そこで、ロサンゼルスにより大きなコミットメントをする必要があると判断し、この土地を購入したのです」と、エマーソンLAの創設者であり90年代のTVドラマ『フレンズ』のプロデューサーでもあったケビン・ブライト氏は言う。
ところが、土地を購入して、単に建物を建てればいいというわけでもない。
「ロサンゼルスにおけるエマーソン大学の象徴になるものでないといけません。LAという街へのコミットメント、エマーソン卒業生へのコミットメント、そしてハリウッドコミュニティへのコミットメントを象徴するような建物である必要がありました」(ブライト氏)
そこで白羽の矢が立ったのが、プリツカー賞の受賞経験がある著名な建築家、トム・メイン率いる建築設計事務所、モーフォシスであった。
あらゆる場所が撮影に適したキャンパス
学生の居住空間を整えることは、「実社会で活かせる経験を学ぶ」というエマーソンLAの重要なコンセプトのひとつだ。加えてエマーソンLAは映画やテレビに特化していることもあり、居住スペース以外のキャンパス構内では、学生がどこでも自由に撮影できるようにしたいと考えていた。そのような希望を叶えてくれたのがモーフォシスの挙げたデザインだったのだ。
吹き抜けのスペース。大きな階段では演劇や撮影も行われる。
「結果的に、プロの制作会社がエマーソンLAの建物で撮影をしてくれるようになりました。アメリカでヒットしたテレビドラマ『Scandal』もここで撮影されましたし、トム・ハンクスがプロデュースした映画の撮影もここで行われたんです」(ブライト氏)。
まさに、建物のどこをとっても撮影に適したデザイン。建物それ自体がアートになった珍しいキャンパスとなったのである。