米国では毎年1700万トンから2000万トンの道路用塩が、路面の凍結や積雪を防ぐために使用されている。道路用塩の散布や事後処理は道路にダメージを与え、流れ出した塩は環境汚染を引き起こす。
研究チームはこの問題に対処するため、新技術の研究を続けてきた。その結果、考案されたのがパラフィンワックスを用いた対策だった。
研究チームは安価で入手可能なパラフィンオイルを用いた3つの実験を行った。その1例目はパラフィンで満たしたパイプをコンクリートに敷き詰めるもの。2例目ではコンクリートにパラフィンを混合したコンクリート板を作った。3例目はコンクリートのみの道路でテストを行った。
その結果、パラフィン加工したコンクリート板上では25時間以内に雪が溶けることが確認された。パラフィンオイルは低温になると液体から固体に変わるが、その際に発生する熱で雪が溶けるのだ。
研究チームは今回の発見を、寒冷地の道路で実際に役立てる方法を模索している。比較的低コストな方法としては、コンクリートを調合する際にパラフィンワックスを混入させるやり方が想定される。これにより、道路用塩から発生する環境被害も避けられる。
今回の研究は寒冷地の空港の滑走路のメンテナンス向上の目的で、米連邦航空局(FAA)の支援を受けて実施された。滑走路にパラフィンワックスを用いることは、飛行機の遅延やキャンセルから生じる莫大な費用の節減にもつながる。
パラフィンワックスの本格的な導入に向けて研究チームは今後、長期間における耐久性のテストも重ねていく。この方法が当局の承認を獲得し、導入が進めば、寒冷地における冬場の交通の困難が、環境に優しい方法で解決できることになる。