緊急時に備えるための防災用品の価格が同社サイト上で急騰しているものの、現時点では何の対策も講じていないと見られることが、その原因だ。特に、ボトル入りの水の価格の高騰が多くの人の怒りを買っている。
経済情報サイトのビジネスインサイダーによると、ツイッターには各社のボトル入りの水の値段を表示したアマゾンのサイトのスクリーンショットが投稿されている。例えば、ネスレのボトル入りの水は1ケース(約500mlのボトル24本入り)で20~25ドル(約2180~2720円)となっている(太平洋標準時の9月6日午前4時過ぎの時点)。
さらに、この価格には「急配」の場合の配送料などが含まれていない。ある投稿者によれば、フロリダ州南部にいる家族に送るため注文しようとしたところ、「急配」の送料は「179.25ドル」と表示されたという。
ネスレのこの商品は通常、4~8ドルで販売されている。クーポンサイト「ハニー」によれば、同月3日には、アマゾンでの販売価格は8.08ドルだった。
「支配者」はアルゴリズム
これらの商品に通常より高い価格を提示しているのは、アマゾンだけではない。問題は同社をはじめとする大半の企業が、アルゴリズムによって価格を調整していることだ。
小売各社はサイト上で商品を売り出す際、市場全体を見回して価格を決定。その後、商品価格は需要に基づいて変動する。「ダイナミックプライシング」と呼ばれるこの手法は、小売業者が市場の変化にリアルタイムで容易に対応することを可能にするものだ。各社は高額の費用がかかる人手を使った分析を行わずに済む。そして、それが企業の競争力強化につながるとされる。
アルゴリズムによる価格の調整は通常、1セントから数ドルの幅にとどまる。3桁の割合での値上がりが起きるのは大抵、ホリデーシーズンだ。そして、高騰するのは生活必需品の価格ではない。だが、ハリケーンなどの自然災害やその他の危機時においては、アルゴリズムはこうした一般的なルールを破る。私たちの生存に欠かせない水やその他の品物の価格が、需要の増加に伴い上昇するのだ。
道徳的ジレンマ
こうした状況に対しては、倫理的な面での疑念が高まる。常に需給の変動に応じて価格を決めるという考え方に対し、疑問が生じるのだ。仮に「その時点」があるのだとすれば企業は一体どの時点で、社会的利益と慈悲の心のために自らの責任を優先させ、人工知能(AI)ベースのプロトコルではなく、自らの判断で価格を決定するようになるのだろうか。
アマゾンに対して訴えたいのは、次点だ──「貴社のアルゴリズムには感情がない。大災害を理解していない。人々が絶望的な気持ちに襲われる状況下で出店業者が不当な利益を得ることがないようにするため、対策を講じるべきだ。貴社はその前例を作る必要がある」
テクノロジーには素晴らしいメリットがある。だが、現代の全てのリーダーたちは、「イルマ」や(先ごろテキサス州を襲ったハリケーン)「ハービー」、その他のあらゆる自然災害を警告として受け止めなくてはならない。企業トップが危機時に自社のテクノロジーに認める行動は、どのようなものであれ直接的に、その人や企業の価値観を反映する。そして、消費者は示されたその価値観によって、その後の態度を決める。