30億光年の彼方から届く「宇宙人の信号」 科学者らが研究中

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地球から30億光年離れた謎に満ちた矮小銀河から、「高速電波バースト(Fast Radio Burst)と呼ばれる高エネルギーの電波が繰り返し放射されていることが明らかになった。

宇宙の知的生命体を探査する「ブレークスルー・リッスン(Breakthrough Listen)」プロジェクトに参加している科学者らは最近、15回に渡って短時間ながら強力な電波を観測した。

高速電波バーストは宇宙の様々な箇所で観測されているが、繰り返し放射しているのは「FRB 121102」という名称の高速電波バーストだけだ。これまでに、同じ銀河から150回以上の高速電波バーストが観測されている。

高速電波バーストの原因として考えられるのは、強力な磁場を持って回転する中性子星だが、エイリアンの宇宙船が発している可能性も否定できない。FRB 121102を観測中の天文学者らによると、これほど活動が活発化するのは初めてだという。

「この銀河からの高速電波バーストがこれほどの頻度で観測されるのは初めてのことだ」とカリフォルニア大学バークレー校SETI研究センターの所長で、ブレークスルー・リッスンのディレクターを務めるAndrew Siemionは言う。

ブレークスルー・リッスンに参加しているVishal Gajjarによると、研究チームはFRB 121102の高解像度データを取得することに成功し、従来よりも精度の高い分析が可能になったという。

高速電波バーストが最初に観測されたのは2007年のことだ。天文学者のDuncan Lorimerとその教え子であるDavid Narkovicらが、オーストラリアにあるパークス天文台で記録された過去の電波データを調べている最中に発見した。高速電波バーストは、発見者の名に因んで「Lorimerバースト」と呼ばれることもある。

「知的生命体」からの信号の可能性

FRB 121102の名称は、2012年11月2日に発見されたことに由来する。発見から3年後、FRB 121102は繰り返し発生する唯一の高速電波バーストであることが確認された。それまで、遠く離れた星の崩壊が高速電波バーストの原因だと考えられてきたが、繰り返し観測されたことでそうではないことが明らかになった。

仮にエイリアンが原因だったとしても、彼らははるか昔に滅んでいるかもしれない。地球で観測された高速電波バーストが実際に発生したのは、人類が暮らす太陽系が誕生してから20億年も経っていないときのことで、その頃地球には単細胞生物しか生息していなかった。

そうだとしても、ブレークスルー・リッスンに参加している科学者たちにとって、高速電波バーストの原因を突き止めることはスリル溢れる研究であることには違いない。彼らは、グリーンバンク望遠鏡を使って5時間の間に400テラバイトものデータを観測することに成功した。

「一度に数ギガヘルツの帯域幅を記録し、数十億ものチャンネルに分割することができるため、高速電波バーストの周波数帯について新たな観測が可能になった。これにより、高速電波バーストが活発になった過程が明らかになることが期待される」とGajjarは言う。

「高速電波バーストが知的生命体による技術文明の証であるか否かは別にして、ブレークスルー・リッスンは、急速に進む宇宙研究をさらに推し進めることに貢献している」とSiemionは話している。

編集=上田裕資

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