ICOは非常に大まかに言うと2つのプロセスを経て行われる。まずは、特異なアイデアを持つスタートアップ企業が資金調達を行うために「独自コイン」の発行をウェブ上で宣言する。そこに値上がりを期待する投資家らの資金が注がれる。
ビットコインに特化したメディア「Coindesk」によると、今年だけで既に18億ドル(約2000億円)を超える資金がICOに投じられた。スーパーコンピュータや人工知能(AI)といった様々なプロジェクトがICOから資金を調達している。投資家らは出資金と引き換えに、トークンを受け取り、入手したトークンを用いて商品を購入する、もしくはそのトークンを他人に売り渡すことが可能になる。
しかし、ICOには法的な後ろ盾がないために、既存の金融監督庁や行政当局から強い非難も浴びている。米証券取引等監視委員会(SEC)はICOに対する注意喚起を行っている。
中国ではICOにさらに危険な未来が待ち構えているとの見方も浮上した。深セン本拠のビットコイン市場「Bitkan」は、ICOを通じて違法な資金調達を行う者たちに対し、中国政府が極刑を課す可能性をブログで指摘した。
Bitkanのブログの投稿はここ2ヶ月ほどの間で広く認知され、中国政府による死刑が実行に移される可能性が大きな話題となった。しかし、この話にはほとんど現実的裏づけがないのが本当のところだ。
中国では違法な資金調達が問題化しており、昨年だけで360億ドル以上の資金が闇ルートで調達されたという。しかし、違法な資金調達を理由とした死刑は2013年以来確認されていない。
最悪でも「終身刑」が適用される
中国で最初に違法資金調達に絡む死刑が行われたのは2011年だ。当時、3名の男が8億6700万ドル(約953億円)相当の人民元を約1万5000世帯から違法な手段で集めたとして有罪宣告を受けていた。
中国の犯罪取締法は1979年に施行され、1997年の法改正以降、現状のフォーマットで運用されている。その160条と179条が違法な資金調達関連の犯罪に最大5年の懲役刑を規定し、192条が“極めて巨額な取引”に関し、終身刑を課すと定めている。
また、199条が192条に対する修正条項を規定しており、“極めて重大な損失を国家もしくは一般大衆に与えた場合”に死刑が適用される可能性に言及している。
しかし、199条は2015年の法改正で削除され、現状では通貨の偽造や武器の密輸といった犯罪に極刑が科される根拠は消滅した。中国の裁判所は現状で44項目の犯罪に関して死刑の適用を行っているが、経済犯に死刑が適用されるケースはほとんど皆無だ。死刑の対象としては偽の医薬品の製造販売や、危険な食品の製造、公金の着服といった犯罪があげられる。
結論として、中国でICOを実施して死刑にされる可能性はほぼ皆無だ。仮にそれが違法な資金調達とみなされた場合でも、最大で5年間の懲役刑が適用される。非常に悪質な詐欺的手法で資金調達を行った場合はそれより長い刑期になる場合もあるが、その場合でも死刑ではなく終身刑が適用される。