「ドーナツ」はブランドの魅力を低下させてはいない。もしそうであればドーナツの提供自体をやめるべきだが、そんなことには決してならないだろう。ダンキンドーナツは今も米国ナンバーワンのドーナツ店としての地位を保ったままだ。
ドーナツ販売を続けつつも名前から「ドーナツ」を外してしまえば、実態にそぐわないとの批判すら受けかねない。やはりダンキンドーナツは今の名前とその差異性を大切にするべきだ。
ダンキンドーナツの改名理由は、米家電量販店のラジオシャックがかつて「ザ・シャック」と改名した際の理由と同じようだ。つまり、企業の成長を阻むとみなすものを切り離そうとしているのだ。
しかし、ラジオシャックは改名に2億ドル(約218億円)もの費用をかけた後、結局元の名前に戻してしまった。当時の最高マーケティング責任者(CMO)、リー・アップルバームはこう言ったとされている。「家電に核となる信頼を与えてくれた、まさにその顧客層を遠ざけてしまった」
ダンキンドーナツも改名により、核となる顧客層に対して同じ過ちを犯す可能性がある。同時に、自社ブランドを試すべき説得力ある理由を必要とする新規顧客を引き付けられなくなるかもしれない。ダンキンドーナツは改名するのではなく、他店との差異化ポイントである「美味しいドーナツとコーヒー」という組み合せをもっと重視すべきだ。
差異性はあらゆる分野のブランド戦略で非常に重要な要素だが、競争率が高く、成長率は低く、コモディティ化しがちなファストフード業界では一層重要だ。他の店との差異を明らかにしなければ、顧客はその店のことを考えもしないし、ましてや来店することもないだろう。