クライアントの多くはガジェットに未来的なデザインを求めるが、彼自身は古き良き時代を思わせるビンテージ風のデザインに思い入れがあった。そんなChuは自分のこだわりを形にするため、仲間たちと共に自身のプロジェクトのLofreeを立ち上げた。
第一号の製品は古い映画に登場するような、クラッシックな外観のタイプライター風のUSBキーボードだった。Lofreeの名を冠したこのキーボードはIndiegogoで73万ドル(約8000万円)を調達し、大成功を収めた。
「世の中には我々と同じビンテージ指向のガジェット好きが多く居ることが分かった。そこで考えたのが“Poison”という名前のBluetoothスピーカーだった」とChuは言う。Poisonの外見はスピーカーというよりむしろ、1950年代のラジオのようだ。
「Lofreeのメンバーは全員、日本のMUJI(無印良品)のデザインが大好きだ。だから我々の製品は小型でキュートなものが多い。小さくて可愛いスピーカーを作ろうと思ったが、単に小型化するだけではサウンド面で劣ってしまう」
彼らは小型でも迫力のあるサウンドを実現するため、設計に半年以上をかけた。オーディオのアウトプット処理用に10ワットのアンプ2機を搭載し、MaxxAudio DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)をスピーカーへ組み込むことで省スペース化を実現。さらに、背面に低音ドライバーを搭載することで、フルボディのサウンドを実現した。
筆者が試してみたところ、Poisonのサウンドはかなりの迫力だ。また、この製品のラジオを思わせるデザインは外観だけでなく、FMチューナーが組み込まれて専用のダイヤルも付き、ラジオとしても立派に機能する。
Poisonはキックスターターで既に100万香港ドル(約1400万円)を超える資金を調達し、目標額を軽々と突破している。クラウドファンディングで2回連続の成功を収めたChuたちは、次はどこに向かうのだろう。
「現時点で製品企画チームには13人のメンバーがいるが、その全員がシンプルなビンテージデザインこそ最高だと信じている。我々は、ハイテクをレトロなコーティングに包んだ製品を作り続けていく」とChuは述べた。