その経緯は、従業員による企業評価サイトを運営するスイス企業クヌヌ(Kununu)の報告書にまとめられている。同サイトにはVW社員の評価が514件掲載されており、うち269件は2015年のスキャンダル以降のものだ。
クヌヌのグローバルコミュニケーション責任者、ヨハネス・プルラーによると、VWの評価は当然ながらスキャンダル発覚後に急落。「フォルクスワーゲンの企業文化は常に信用・誠意・信頼に基づいていたが、スキャンダルでこれが全て危うくなった」という。
VWの従業員は、世間での自社のイメージが深く傷ついたと感じた。「スキャンダル勃発前のデータを比べると、VWはクヌヌが集計した職場満足度のほぼ全項目で、BMWやメルセデス・ベンツ、子会社のアウディを上回る最高評価を受けていた」とプルラーは話す。しかし排ガス不正問題でこうした好評価は失われ、13項目中12項目で最下位に転じたとのことだ。
スキャンダルの影響は厳しかった。何十億ドルという罰金、今後の不正を防止するための独立監視機関による数年にわたる審査と監督、マルティン・ビンターコルン会長の辞任、そして大いなる不名誉──。士気を失った従業員の信頼を回復するべくVWが実行した戦略は、情報開示と積極的なコミュニケーションだった。
プルラーによると、「同社は、今までの経緯と次の展開について全従業員に情報が渡るようにした。また、外部向け発表で公式に責任を認めたのと同様、信頼回復の第一歩として社内で直接対話の機会を持った」ほか、従業員による感情や懸念の表明を奨励したという。
クヌヌでは、各従業員の評価に雇用主が返信できる。VW従業員による評価500件のうち、170件に対して同社経営陣から返答があった。フィードバックに反応する雇用主はあまり多くなく、他社に比べ高い数字だとプルラーは語る。
経営陣は従業員から見える存在になり、スキャンダルに下位の従業員とも話し合う姿勢を示した。「社内に不信感が芽生えている場合、近づきやすい存在になることが重要だ。VWは、信頼再構築の第一歩となる直接対話の効果を理解していた」とプルラー。