「ポルトローナ・フラウでは、25年前からフェラーリの内装を手掛けてきました。そんな縁もあって、フェラーリ創業70周年という節目を記念するプロジェクトとしてオフィスチェアを製作したのです。デザインはフェラーリ デザインセンターが担当し、ポルトローナ・フラウが製造。薄型のフォルムを作るために、椅子のシェルにはカーボンを使用していますが、これも自社製です」
「弊社は100年以上の歴史がありますが、常に時代を先取りしてきました。最新と伝統を両立できるのが、我々の強みなのです」とポルトローナ・フラウのニコラ・コロプリスが熱弁すれば、横にいたフェラーリ デザインセンター長のフラビオ・マンツォーニも黙ってはいない。
「フェラーリのオーナーが座るための椅子というのがアイデアの原点。ステアリングのパーツやパドルシフトをイメージしたシート調整スイッチなど、随所にフェラーリのエッセンスを取り入れました。椅子をデザインするのはとにかく楽しかったですね。自動車の場合、素材にも構造にもたくさんの制約がありますが、その点椅子は自由度が大きいので、たくさんのチャレンジができました。それがとにかく楽しかったのです」
(左)フェラーリのシートを外したかのようなフォルムのオフィスチェア「コックピット」。(右)右ががポルトローナ・フラウのブランドディレクター、ニコラ・プリス。左がフェラーリ デザインセンター長のフラビオ・マンツォーニ。
よほどの自信作なのだろう、笑顔が止まらない。ちなみにフラビオ・マンツォーニは、今年発表されたウブロの腕時計のデザインも担当している。自動車、椅子、時計など全く畑違いの分野であっても揺るぎのない、“フェラーリらしさ”の正体とは何なのだろうか?
「フェラーリとは最高のテクノロジー。デザインはその能力に見合った形であり、しかもアーティスティックでなければいけない。その考え方は、全てのプロダクトに共通しているのです」
なお椅子の張地やシェルの素材は、用意された豊富な素材の中から自由に組み合わせることが可能。これはフェラーリ・テーラーメイド・プロジェクトを意識したサービスである。
続いてインタビューに応じてくれたのは、デザインユニットLudo vica+Roberto Palombaのルドヴィカ・パロンバ。デザインを手掛けた新作「Let it Be」に腰かけてご満悦だ。
「このソファは昔のベッドの構造からインスピレーションを受けたもの。モジュール式の家具で、全てが軽やかにできています。上にはクッションをたくさん置いて座るので、とにかく心地よいんです。ソファの側面や背面にはテーブルや書棚を加えることもできるので、様々なライフスタイルに合わせることができますよ」
最後は大黒柱ともいえるデザイナー、ジャン・マリー・マソーにご登場いただこう。
「ポルトローナ・フラウの家具たちには、芸術的な品質と本物のクラフツマンシップが宿っています。洗練されたデザインであり、とても快適です。しかもポルトローナ・フラウは、自動車や飛行機、高級ヨットの内装も手掛けています。その特殊性と専門的な知識と技術によって、家具業界でも特別な地位を築きました。つまり我々は、“明日の古典”をつくっているのです」
伝統を再定義することで、新たな進化を遂げる。それがポルトローナ・フラウなのだ。