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2017.07.27

ジミー・チュウ買収のマイケル・コース、「前途多難」と見る理由

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ファッションブランドのマイケル・コースは、12億ドル(約1330億円)という多額を注ぎ込み、ジミー・チュウとの「結婚」の合意にこぎつけた。だが、ハネムーンの期間が過ぎたら、両社を待ち受けているのは困難の多い道のりだろう。

販売の低迷が続くマイケル・コースは今回の買収によって、売上高を大幅に引き上げることができるはずだ。また、売上高の70%を北米地域から得ている同社は、アジア・欧州地域で売上高の71%を稼ぎ出しているジミー・チュウと組むことにより、店舗網を世界的に拡大することができる。

さらに、「マステージ」ブランドの位置付けにあるマイケル・コースは、高級靴ブランドのジミー・チュウ買収により、長年にわたって目標としてきた「高級ブランド」市場への参入も果たすことになる(マステージは、「マス(大衆)」と「プレステージ(高級)」を合わせた造語)。

両社の「栄光」は過去のもの?

両ブランドはこれまで、著名人らの支持によって広く人気を得てきた。マイケル・コースは2012年まで10年にわたり、デザイナーを目指す人たちの姿を追うリアリティ番組「プロジェクト・ランウェイ」の審査員を務め、自らがブランドの「広告塔を務めるセレブリティー」となった。

一方、ジミー・チュウは英国の故ダイアナ元皇太子妃やミシェル・オバマ前米大統領夫人といったファッション・アイコンが愛用したこと、人気ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」の中で取り上げられたことなどによって、知名度を上げた。

だが、モデルで前出の番組の司会者でもあるハイディ・クルムが言うように、今日の人気が明日には消えてなくなることもあるのがファッションの世界だ。クリエイティブでの協力を通じて両ブランドがかつての魅力を一部でも取り戻すことは可能かもしれない。だが、結局は経営上のさまざまな問題によって、身動きが取れなくなっていくことも考えられる。

困難な道のり

また、ファッション業界では高級品市場でも横ばい状態が続いている。成長しているとは言えない。マイケル・コースと同じ「マステージ」の各社は、「高級」と「大衆向け」ブランドの双方とも、激しい競争を繰り広げている。
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編集=木内涼子

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