世界で初めて“モチベーション”にフォーカスした経営コンサルティング会社、リンクアンドモチベーションの小笹芳央会長が所有する時計コレクションには、“ムーンフェイズ”が搭載されているものが多い。ムーンフェイズとの出会いは、リンクアンドモチベーションを立ち上げたばかりの2001年頃だったという。
「当時の秘書が、ぼくが興味を引きそうな新聞や雑誌の切り抜きをクリッピングしてくれていたんですよ。そのなかに“パーペチュアルカレンダー”搭載のモデルがあって、まずその美しさに惹かれました」
それまで、高級時計であっても3針などのモデルしか持っていなかった小笹会長は、以降、美しさと機能に惹かれ、パーペチュアルカレンダーを中心に腕時計を購入するようになった。そして、このモデルに惹かれる理由を明確に語ってくれた。
「ひとつは、ムーンフェイズが好きなんです。古来から人間は時を知るのに空を眺めるわけですよ。空を見て星の位置とか、お月様の形とかを見て、季節や時を知るんですね。そういう昔の人たちが見ていたものと同じものが、このケースの中にある。凄く贅沢ですよね」
もうひとつが、機能的見地からパーペチュアルカレンダーに興味を持ったということだ。パーペチュアルカレンダーは、永久カレンダーともいわれる複雑時計で、日付の調整が不要なタイプ。閏年まで計算してくれるため、ユーザーは一切カレンダーの調整をしなくてもよいという機構である。もちろん、この機構を実現するメカニズムは複雑だ。
「ぼくが興味を持ったのは、なによりもダイヤルに表示されている時間の周期です。このジャガー・ルクルトのモデルだと、1年で1周する針から秒針まで8階層もの時
間軸があるんです。これは会社に似ていて、たとえばぼくのようなトップは年単位という長いスパンで物事を見なければならないし、役員、部長、課長と現場に近づくにつれ、そのサイクルが短くなっていく。組織は階層毎に体内時計が違うのです」
そして、このパーペチュアルカレンダー・モデルのなかに組織の理想を見るのだともいう。
「ぼくはこの時計を見るたびに、自分が近視眼的にならないようにしなければ、といつも思うのです。それに会社では階層毎に時間軸が違うので、そこに摩擦が起こる。このモデルは、異なる時間軸が見事に噛み合っています。とても美しいですよね」
今回、小笹会長にはパーペチュアルカレンダーの新たなる魅力を教えられたようである。
小笹芳央◎1961年生、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、2000年リンクアンドモチベーション設立、同社代表取締役社長就任。