ナイキは2015年度、売上高を2020年度までに500億ドル(約5兆5420億円)以上に引き上げるとした大胆な計画を発表した。つまり、売上高を5年間で約200億ドル増やすということだ。だが、過去を振り返ってみると、ナイキは年間の売上高を200億ドル増やすのに13年かかっている。この目標は、やや野心的なものといえそうだ。
同社はEコマース、女性向け商品、ジョーダンブランドの3分野にリソースを集中させることで、事業全体を成長させていきたい考えを明らかにしている。
Eコマース
Eコマース部門はナイキの成長戦略において重要な位置付けにあり、2020年度までに同部門の売上高を約70億ドルに引き上げることを目指している。だが、達成するには2015年度の売上高12億ドルから年平均成長率42%を維持しなければならないことになり、実現は困難と考えられる。
新たにカナダに加えスイスやノルウェー、チリ、トルコ、メキシコの各国でもインターネット販売を開始したことから、同部門の2016年度の販売は全体として、順調だった。だが、2017年度第3四半期(2016年12月~2017年2月)には減速、売上高の伸びは18%にとどまった。年度初めから同四半期末までの売上高は35%近い成長を記録したものの、目標の42%には及ばなかった。
女性向け商品
メンズとレディース部門を合わせた売上高のうち、レディースが占める割合は約29%。ナイキは2020年度までに、レディース部門の売上高を2015年度の57億ドルから110億ドル増やしたい考えだ。これに向け、すでに複数の女性向け商品専用の店舗も開設している。
(アスレチックとレジャーを合わせた)アスレジャー市場はここ数年にわたって力強い成長を遂げており、ナイキは同市場の需要を取り込み、売り上げをさらに伸ばしたい考え。レディース部門は2017年度初め以降、メンズ部門を上回る2桁成長のペースを維持している。
ジョーダンブランド
ジョーダンブランドの売上高は、倍増を目指しており、2020年度までに年間売上高およそ45億ドルの実現を狙う。だが、フットウェア市場では2017年度初め以降、主にアディダス、アンダーアーマーとの競争が激化している。
アンダーアーマーがバスケットボールのステファン・カリー選手と契約したことで、同社のシューズはカリー選手の人気に後押しされ、ナイキが展開するいずれの人気選手シリーズも上回る販売数を記録している。ナイキは失った市場シェアを一部でも取り戻そうと「KD(ケビン・デュラント)」や「レブロン」シリーズの廉価版を投入したが、これらは利ざやの減少につながっている。
国内市場での競争圧力を考えると、ナイキが野心的な目標を達成するためには国外での販売に重点を置く必要があるだろう。
目標達成は可能か
総合的に見て、ナイキは目標達成に近づくことはできたとしても、実際に達成することは難しいと考えられる。激しい競争と伸び悩むEコマース部門の成長から考えれば、売上高が500億ドルの大台を超えるのは、2020年よりも先になりそうだ。