これまでウーバーやメガネ販売のWarby Parker、ロボアドバイザーのBettermenらに出資を行ってきた同社は最新の投資ファンドを組成するに当たり、このソフトウェアを用いて自社の戦略を練ったという。
「ベンチャーキャピタリスト自身がテクノロジーを使うなんて驚きだろう?」とメンローのマネージングディレクター、Venky Ganesanは冗談を飛ばす。しかし、結果は驚きに値するものだった。
1976年から2010年の間に組成された5億ドル以上のファンドを分析したところ、3倍以上のリターンを稼いだのはわずか1.2%しかなかったのだ。その結果を踏まえ、メンローは最新のファンドの規模を4億5000万ドルに設定した。
「ファンド規模が大きければ、リターンが低くても多額のマネジメントフィーを受け取ることができる。しかし、我々は投資家の資金の管理者ではなく、優れた企業の創出者であり続けたい」と投資担当のMatt Murphyは話す。
メンローは新ファンドの半分をシードラウンドとシリーズAに投資する予定だ。対象業種は、これまで通りサイバーセキュリティやクラウドインフラ、SaaS、マーケットプレイス、フィンテックになるという。
VC業界では、有望なスタートアップに対する投資競争が過熱している。メンローは初期の市場リーダーを追い抜く可能性の高い企業に投資できれば、最も高いリターンが期待できると考えており、データ解析を投資の意思決定に役立てている。メンローが開発した独自ソフトウェアは「Menlo Signals」と呼ばれ、サービスのDAUやMAU、業界順位、ページビューなどの指標をトラッキングする。
メンローは、4年前にドッグシッターサービスの「Rover.com」への投資を検討した。当時、Rover.comはライバルの「DogVacay」にユーザー数や売上高成長率で劣っていたが、Signalsを用いた分析を通じRover.comの顧客ロイヤルティの高さを見抜き、「数か月でDogVacayを追い抜くことが可能だ」と判断した。
メンローは2014年にRover.comに出資し、今年3月にRover.comはDogVacayを買収した。
エアビーアンドビーの“会議室版”にも出資
メンローは、有望な投資先候補の発掘にもSignalsを活用している。その一例がエアビーアンドビーの会議室版とも呼べる「Breather」だ。メンローは、BreatherのシリーズB(評価額8000万ドル)はパスしたが、Signalsが同社を高く評価した結果を受け、シリーズC(評価額2億1000万ドル)を主導して投資を実行した。
これまでの結果からSignalsはB2C企業の評価により適しているという。彼らは、Signalsの分析結果を踏まえながら、他の評価も組み合わせて総合的に投資判断を行っている。「スタートアップ投資で成功するのに必要なのは、99%の実行能力と1%のインスピレーションだ」とGanesanは言う。
Ganesan、Murphy、Shawn Carolan、Mark Siegelの4人のマネージングディレクターらは独自の企業文化やベンチャー気質を大切にしている。Ganesanは、メンローの新たな取組みについて次のように語った。
「チェスプレーヤーの最上位であるグランドマスターがコンピュータを持てば無敵であるように、我々もデータドリブンなアプローチによって競争を有利に進めたい」