今回の禁止命令は現在アルファベット傘下で自動運転プロジェクトを手がけるWaymoの申し立てを、当局が認めた形だ。米連邦地方裁判所のWilliam Alsup判事はウーバーの担当エンジニアのアンソニー・レバンドウスキーの犯罪行為に関し、司法省に捜査するよう指示したが、それから一週間を待たずにこの決定が下された。
「提出された証拠はレバンドウスキーがWaymoから持ち出した資料が、ウーバーのLiDAR技術開発に使用されたことを示している。これは知的財産権の侵害にあたる」とAlsup判事は禁止命令の中で述べた。
裁判所はウーバー側に今後レバンドウスキーがLiDARのプロジェクトから離脱することを求め、グーグルから持ち出された情報がウーバーによって利用できなくなることを求めている。さらにウーバー側の誰がこの件の責任者であるのかを開示することを要求している。
今回の命令によりウーバーの自動運転に関わるプロジェクトが全て停止される訳ではないが、この分野のパイオニアを目指す同社にとっては厳しい状況となった。ウーバーのトラビス・カラニックCEOは「完全自動運転こそが同社の未来をつくる」と宣言していた。
今回の停止命令とレバンドウスキーの犯罪行為に関する捜査要請は、ウーバーがグレイボールと社内で呼ぶ手法により、同社が当局の追求を回避していたことが明るみになって以降になされた。
今回の騒動の発端となったのは元グーグルのエンジニアだった、レバンドウスキーに対する疑惑だ。彼はグーグル社内で自動運転部門を統括するスターエンジニアだったがグーグルを退社する数週間前の2015年に、会社のサーバから少なくとも14000以上の機密書類データを盗み出していたとされている。また、彼はグーグルを退社する数週間前に、9ギガにも及ぶデータを個人のハードディスクに収めてから社を去ったとされている。
その後レバウンドスキーは自動運転トラックのスタートアップ、Ottoを立ち上げ、同社は2016年8月にウーバーに6億8000万ドルで買収されていた。
「当局が今回の禁止命令を出したことには驚いている。元々のWaymo側の要望はレバウンドスキーを自動運転プロジェクトから外すことだった」とスタンフォード大学で知的財産権を教える教授のLisa Larrimore Ouelletteは述べた。
Ouelletteはまた「Alsupが司法省に捜査を依頼したことも、極めて稀なケースと言える」と付け加えた。
Waymoの親会社のアルファベットは自動運転車開発について、ホンダとのコラボレーションも進めている。また、ウーバーの競合のリフトも、Waymoと共同で自動運転車のパイロットプログラムを進めていくことをアナウンスした。
Waymoの担当者は次のようにコメントした。「自動運転車の開発競争は法廷ではなく研究所や道路上で進められていくべきだ」