カリスマファンドマネージャー「投資の作法」


東芝の社員に伝えたいこと

現在、日本の個人金融資産は1700兆円で、900兆円近い現預金がある。市中に出回っているお金は100兆円程度あり、かなりの部分がいわゆる「タンス預金」だ。

節約は大切だが、日本人は節約に傾きすぎるきらいがある。例えば、100兆円のうち2.5%に当たる2.5兆円があれば、東芝の半導体部門を買収することができる。それにより多くの雇用を支えられるし、彼らの半導体ビジネスも発展するに違いない。

東芝の半導体部門の社員の方々に伝えたい。皆さんの半導体部門は技術力が高く、国際競争力もある。金額は大きいが、その気になれば従業員による買収(EBO)などの手段もある。結局、東芝の半導体部門が成功するかどうかは、今そこで働くエンジニアや営業の社員のがんばりにかかっている。タンスの中に眠っているお金を使うことだってできるはずだ。

資産運用をしていて悔しいのは、私たちよりタンスやつぼの方が信用されていることだ。当社レオス・キャピタルワークスの運用残高は約2500億円。それに対して、タンス預金の残高は100兆円。そのお金は眠っている状態であり、非常にもったいない。

未来は不確定なので、投資にはギャンブルの要素もあるかもしれない。だが、がんばっている人を応援し、実際に成果を得ることができたらすばらしいではないか。投資とは、誰かの夢や未来に賭けるものなのだ。先日、テレビ東京の「カンブリア宮殿」で当社と筆者の活動について取り上げていただいた。その中で、作家で番組司会者の村上龍さんがこうまとめてくれた。

「ファンドマネジャーには、最先端の情報器機を身につけ、世界を駆け巡り、莫大な資金を動かす『かっこいい職種』というイメージが、いまだにあるような気がする。藤野さんは違う。事前にある程度の情報を得た上で、自分の足で全国をまわり、自分の目で投資適不適を確かめる。『金があれば何でも買える』。そんなことを言った人もいた。だが、信頼は金では買えない。藤野さんが組むファンドは、信頼がベースになっている。投資で重要なのは、未来の価値を見極めることだ。だから、投資は、ときとして『希望』と同義語となる」

そして、「信頼と希望のファンド」とまとめてくれた。非常にうれしく、その「信頼」に応えなければいけない。ひふみ投信の成績がよいのは、日本に希望を持っているからで、そして希望を持った経営者と会社に投資してきたからだ。相場は不確定なので、未来はわからない。しかし、未来を信じて投資し続けることはできる。

私は日本の未来は明るいと信じている。東芝の半導体部門の動向は、日本の未来の試金石だと考えている。もちろん、東芝は価値改善をできる企業に投資を受けるべきだ。とはいえ、日本で生まれ育った者としては寂しい。日本人がタンス預金を使うときがきたのではないか。

文=藤野英人

VOL.12

ひふみ投信が「オーナー経営者」に投資する理由

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