「サムスンの新型スマホはAndroid 7.0を搭載している。グーグルの音声アシスタントを利用できるのに、Bixbyを使う必要があるのだろうか。何故サムスンは重複する機能をわざわざ開発したのだろう?」とMKBHDの通称で知られ、世界で最も多くの購読者を持つガジェット紹介動画ユーチューバー、Marcus Brownleeは疑問を呈す。
S8を実際に使ってみた人の多くは、Brownleeの意見に同調する。グーグルアシスタントにも欠点はあるが、グーグルが保有する膨大なデータ量を考えれば、Bixbyよりも性能が優れていることは明白だ。もう一つの大きな問題は、Bixbyが当面英語と韓国語にしか対応せず、世界中の多くの人が利用できないことだ。
ネット上のフォーラムでも「あえてBixbyを使う必然性がない」という意見が大勢を占める。S8の側面には、Bixby専用のボタンが設置されているが、多くのユーザーはこのボタンを他の用途に使う方法を探している。
「誰も求めていない機能」との声が大半
こうした事態に追い討ちをかけるように、ウォール・ストリート・ジャーナルは「Bixbyの英語対応が4月21日の発売開始に間に合わない」と報じた。対応開始まで1か月以上を要する可能性があり、当初は韓国語を話せるユーザーしかBixbyを使えないことになる。サムスンはこの報道を事実だと認めた上で、「The Verge」で次のようにコメントした。
「Vision、Home、Reminderを含むBixbyの主要機能は、4月21日のGalaxy S8のリリース時に利用できます。米国では、春後半よりBixby Voiceを利用できるようになります」
これは要するに、韓国語が話せない人にとって発売からしばらくの間Bixbyは無用の長物に等しいことになる。Bixby Visionは、カメラを物体に向けると関連する画像やリンクを表示してくれる便利な機能だ。しかし、Bixby Homeはグーグルナウ(Google Now)と何ら変わらず、Bixby Reminderは、タスクを忘れないようにリマインダーを通知してくれるだけの機能なのだ。
欧米の消費者はGmailやグーグルマップなど、グーグルのエコシステムにどっぷり浸かっている。グーグルアシスタントからBixbyに切り替えさせるのはただでさえ至難の業なのに、そこに英語対応の遅れが加わって、ハードルはさらに高まったと言えよう。
恐らく多くの欧米人はBixbyを初めから使うつもりなどなく、英語対応の遅延がS8の購入意思決定に与える影響は皆無に近いだろう。むしろ筆者が懸念するのはS8がファーウェイやシャオミに比べてバッテリーの持ちが悪いことと、指紋センサーの位置が最悪でカメラのレンズを汚してしまう点だ。それでも、S8はディスプレイとコンパクトなサイズで欧米でも高い人気を得るに違いないとは思うのだが。