同社は2015年11月、ダラスの一部店舗で生の牛肉から作るハンバーガーの試験導入を開始していた。提供するメニューの質の向上に向けた戦略の一環だ。今回の決定は、数か月にわたるその試験が成功に終わったことを受けたものだ。
同社ではこれまでにも、人工保存料の使用中止やマーガリンをバターに変更するなど、ヘルシー志向のための改革に取り組んできた。顧客の反応は極めて肯定的だったことから、同社にとって問題となるのは業務の面だ。主にサービス提供のスピードと品質に関わる問題に同社が対応することができれば、顧客の増加につなげることが可能となるだろう。
今後の課題
注文を受けてから生の牛肉を使用してバーガー類を作る場合、現在同社が大半のメニューで使っている冷凍のパティを温める方式よりも時間がかかる。これによって、効率の良さで知られるマクドナルドのサービス提供のスピードは落ちることになる。利用客は少しくらい余計に待たされても構わないと考えるかもしれないが、この方式の変更には、食品汚染の懸念も伴う。そのため、厳格な食品安全基準の導入が必須となる。
2016年にノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルが実施した調査では、マクドナルドの20以上のフランチャイズ店が、生の牛肉を使うことでウイルスによる汚染の危険が高まり、多数の顧客にサービスを提供する能力が制限されることになるとの懸念を示した。
新鮮な食材の使用で知られるチポトレ・メキシカングリルはウイルスによる集団食中毒発生で売上高が大幅に減少。1年以上たった今も、影響が続いている。マクドナルドは調理方式の変更を確実に成功させるためには、この問題に対する懸念にも対処しなければならないだろう。
マクドナルドの企業価値に大きな影響を及ぼすのは、年間の来店客数と利用客1人当たりの平均支出額だ。
新鮮な食材を導入することで、一部商品については値上げが可能かもしれない。だが、利用客の支出額は増えるかもしれない一方で、食材の仕入れにかかるコストが増大することから利ざやは縮小する可能性がある。
新鮮な食材を使ったバーガー類の需要は高まっており、専門家らは高級ハンバーガーの売上高は2021年までに現在の2倍となり、100億ドル(約1兆1000億円)に達すると見込んでいる。その他のバーガー類を上回るペースで増加すると予想される。