ケビン・ジョンソン社長兼最高執行責任者(COO)に近くその座を譲るハワード・シュルツ最高経営責任者(CEO)は2011年、スターバックスのブランドロゴから社名を外した。これについてシュルツは当時、「将来に手掛ける事業が、必ずしもコーヒーに関連したものである必要がなくなる」と説明していた。
エボリューションがスタバのロゴを使わず、同社からは独立したブランディングを行ってきたことは、皮肉とも言えるだろう。恐らくそれは、時代を先取りしすぎていたかもしれないジュースバーを展開する上での安全策だったのかもしれない。
さらに重要な点だったのは、スタバがコーヒーに限定した事業形態から離れ、500億ドル(約5兆6000億円)規模とされる健康食品市場に参入したことだ。同社はこれについて当時、流行の「グルテンフリー」に走る若い母親たちの取り込みを狙っているわけではないと主張していた。だが、エボリューションの開店をわずか4か月足らずのうちに実現したスターバックス幹部によれば、これはやはり流行を追ったビジネスだったのだ。同社が5年間に新設したのは、わずか4店舗だった。
皮肉な結果はさておき、スタバが米国の都市部の文化を変えることに重要な役割を果たしてきたことは事実だ。コーヒーショップは数十年のうちに、それまでバーや居酒屋、ダイナーなどが市民に提供してきた「第三の場所」を、それらに代わって提供する存在となった。職場でも自宅でもなく、誰でも入れる「中立の領域」だ。
一方、スタバの経営陣は何か私たちが知らないことを知っているのだろうか。(多角化への着手は、)コーヒーそのものが以前のような魅力を失ったということなのだろうか。エボリューションがそのコーヒーの代わりを提供するものであったのなら、スタバはその斬新なコンセプトの店舗の経営を、継続していただろう。
エボリューションは主に、低温圧搾するため栄養分が損なわれないコールドプレスジュースを提供してきた。オレンジ、レモネード、アップルなど5種類のジュースは高圧殺菌処理を施しているため、40日間の保存が可能だ。メニューにはジュースの他、ケールやレンズ豆、ソバを使ったサラダやサンドウィッチもあった。ボトル入りのジュースは今後も、スタバの各店舗で販売する。