世界中で毎月3,000件を超えるサイバー事件が発生している。だが、先の米中首脳会談でもこの問題は棚上げにされた。サイバー攻撃の対象は、平和憲法下の日本も例外ではない。情報セキュリティのプロの養成は日本の喫緊の課題でもある。
もし原子力発電所がハッキングされ、原子炉が遠隔操作で動き出したらどうなってしまうのだろうか。
考えただけでも恐ろしいこのような事態がいまや現実のものになりつつある。サイバー攻撃の標的がウェブの世界からインフラといった生活に直接被害が及ぶものに変わってきているのだ。2010年に起きたイランでの「Stuxnet」事件が世界を震撼させ、その後続々と各国がセキュリティ体制を見直すなか日本も対策に動き出した。そこで問題になったのが技術者の不足である。最終的に35万人の従事者を必要とする情報セキュリティ業界において、現段階で質ともに十分とみなされているのはたったの10万人前後であり圧倒的な人材不足に陥っているのが現状だ。海外では優秀であればオタクであれハッカーであれ政府が喜んで雇用しようとする。つまりはネットワークに「精通している」ことが信用を得る条件なのだ。対照的に、正規教育機関での訓練経験がある「まっとうな」者しか採用してこなかった日本は人材確保において大きく遅れをとった。迫りくるサイバーテロへむけ抜本的な人材育成改革が叫ばれるなか、危険察知能力が高くセンスのある若者をフリーターやニートと呼ばれるカテゴリから抽出しようという新たな動きが出てきた。デバックを趣味とするような非凡な彼らの能力を伸ばし、サイバーセキュリティのプロ集団を育てることが出来るのか。脅威との戦いは既に始まっている。