昨シーズンから、中国の各クラブは数百億円をつぎ込んで欧州や南米の才能あふれる選手らを呼び込んできた。この「爆買い」の大きな原動力となっているのが、サッカー愛を公言する習近平国家主席だ。だが金に物を言わせるこの作戦は、果たして長期的な成功につながるのだろうか?
習主席が狙うゴール
13億人もの人口を抱える中国だが、サッカー界では負け組だ。2018年ワールドカップ(W杯)予選ではイラン、カタール、韓国、シリア、ウズベキスタンを含むグループ内で一勝も挙げられず、本選出場が危ぶまれている。中国の「龍之隊(チームドラゴン)」は現在、国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキングで86位と、アジアの強豪である韓国(39位)や日本(52位)に大差をつけられている。
これは、習主席にとって決して満足できない状況だ。習は2015年、中国サッカーに対する最大の期待は代表チームを世界トップレベルに成長させることだと語っていた。さらに中国政府は昨年、同国を2050年までにサッカー大国とするための計画を発表した。
経済成長の鈍化に悩む中国にとって、サッカー界の振興には多くのメリットがある。国際会計事務所デロイトのスポーツ・ビジネス・グループを率いるダン・ジョーンズは、スタジアムや関連商業活動、クラブ、スクールといった分野での雇用創出が見込めるほか、スポーツを通じた一般市民の健康増進といった経済以外の利点もあると指摘している。
記録的爆買い
多くが大企業により所有されている中国のクラブは、サッカー大国を目指す政府の野望に後押しされ、巨額投資を行ってきた。2015~16シーズンのスーパーリーグ全体の支出額は前季比で170%増え、過去最高額の4億5,000万ドル(約509億円)に達した。
年俸額も天井知らずとなった。メディア報道によると、上海申花はテベスに週当たり80万ドル(約9,000万円)以上もの報酬を支払う予定で、これは世界のサッカー選手で最高額となる。2位は上海上港のオスカルで、報酬は週49万6,000ドル(約5,600万円)に上るとされる。なお、レアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウドの週当たりの報酬は45万3,000ドル、バルセロナのリオネル・メッシは41万7,000ドルだ。
中国サッカー情報サイト「ワイルド・イースト・フットボール」の創設者、キャメロン・ウィルソンは、こうしたスター選手はプレーレベル向上に加え、国内サッカー人気の増加に寄与できると述べている。だが、「中国サッカー界の未来は国産スター選手を輩出できるか否かにかかっており、この点においてまだ先は長いようだ」という。