テレビメーカーらには今後、個人のデータ収集に関し慎重を期することが求められるが、一方で警察は個人の視聴履歴を犯罪捜査に活用する試みも行っている。その例としてあげられる事件が昨年発生した。
2016年6月、米国合衆国国土安全保障省(HIS)の捜査員らは、児童ポルノ所持容疑で有罪判決を受けた男のサムスン製スマートTV内のデータを捜索した。Mikhail Feldmanと名乗る持ち主は、そのテレビでグーグル検索を行い、アダルト動画や児童ポルノを視聴していたことを認めた。
これは、スマートTVに関連して捜査令状が発行された、初めてのケースと見られる。捜査令状はテレビを通常のコンピュータと同様に扱い、機器内の児童ポルノ関連のファイルにアクセスする権限を当局に与えた。さらに、ネットの視聴履歴やオンラインのプロフィール、関連パスワード等を解析する権限も付与していた。捜査でどのような証拠が採取できたかは明らかになっていない。
デジタル捜査に詳しいSANS Institute社のロブ・リーによると、「捜査現場でスマートTVはスマートフォンと同様の取り扱いを受け、証拠の押収に用いられる可能性がある」と述べる。セキュリティ業界からも、スマートTVにハッキングをしかけ、個人情報を盗み出そうとするハッカーの出現を警戒する声が出ている。
アップルTVにも脆弱性の危険が
スマートTVはセキュリティ的観点からいうと、他の室内コネクティッド機器よりも脆弱だ。「この懸念はアップルTVにも当てはまる」とイタリアの犯罪捜査企業Reality NetのMattia Epifaniは述べている。
Epifaniは捜査関係者がアップルTVをPCに接続した場合、どのようにデータを取り出せるかをテストした。「アップルTVにはiPhoneのようなパスワードロックが存在しないため、コンピュータをつなげばデータを取り出すことが可能だ」とEpifaniは述べる。
「単純にUSBポート経由でアップルTVを接続するだけで、デバイス内のファイルはコピー可能になる。これは脆弱性と呼ぶよりもむしろ、アップルの仕様と見られる」と彼は述べた。
Epifaniが行った実験ではアップルTV内からアップルIDや、ユーザーの書籍や映画、音楽の購入履歴、さらに接続されたiPhonesやWi-Fiネットワークの履歴が取得できたという。
この話から得られる教訓は、次のとおりだ。スマートTVの利用にあたってはセキュリティ面に注意することが必要で、問題になるようなデータは保管すべきではない。