世界を信頼でつなぐ、革命的「希望の技術」[本は自己投資! 第7回]

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ブロックチェーンを使えば募金を送金するための仲介機関が不要になる。しかもお金がどう流れたかは改変不能な記録として残るので、政府や支援団体が不正を行うことはできない。

もちろん災害時に被災者個人へ直接送金するのは現実的に考えて無理があるが、少なくとも自分の寄付したお金がどこで誰のためにどう使われたかをすべてガラス張りにできるシステムを、私たちはすでに手にしているのである。

ブロックチェーンはさまざまなことに利用可能だ。個人と個人の間で取引や決済が簡単にできるとなれば、貧しい人々がビジネスに参入することも容易になる。資産の登録にブロックチェーンを使えば、権力者が勝手に土地を奪うこともできなくなる。ニュースの発信元が信頼できるかどうか、嘘ニュースかどうか心配する必要もなくなる。手にした商品がほんとうにフェアトレードによるものかどうかもすぐに確かめられる。

このように応用範囲は実に広いのだが、懸念される点もないわけではない。

たとえば近年、商用化への道がひらけた量子コンピュータの存在だ。現在のスーパーコンピュータが何百年もかかるような計算を数十秒で終わらせる能力を持つ量子コンピュータにかかれば、ブロックチェーンに使われている暗号技術などあっという間に破られてしまう可能性がある。ブロックチェーンの超高度なセキュリティすら今後は安心できないというわけだ。

でも、だからといって歩みを止めてしまうのはどうだろう。いたずらに心配の種を数えるよりも、いまはこの破壊的なイノベーションを使って、世界をどうより良いものへと変えることができるかを考えるほうが建設的ではないか。

もし貧困を世界からなくすことができたら。もし権力者の不正を世界からなくすことができたら。もしひとりひとりの意思がより反映される社会をつくることができたら――。

未来をどう創るかは、私たちの想像力とアイデアにかかっているのだから。

文=首藤 淳哉

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