しかし、今年の音楽業界を振り返ると、多くの予測が外れている。ここでは実現に至らなかった、2016年の音楽ビジネスのトレンド予測を挙げてみた。
1. 無料ストリーミングは死ななかった
2015年の5月、スポティファイの無料ストリーミング期間の上限が、3ヶ月に設定されるとの噂が流れた。アップルミュージックのような課金型モデルの台頭により、無料のスポティファイが大手レーベルから強い非難にさらされていると、ローリングストーン誌等のメディアは述べていた。
しかし、無料ストリーミングは現在、音楽業界に巨大な利益をもたらしつつある。ワーナーミュージックは直近のリポートで、過去8年で最高の年次売上を報告し、ストリーミング収入が23.1%の伸びを記録したと述べている。その多くがスポティファイ等の無料ストリーミングからの収入だった。
ストリーミングの問題点はアーティストやレーベル側に利益をもたらさないことでは無く、ストリーミング事業者自身が利益を生んでいないことだ。現在まで、ストリーミング事業を収益化できた事業社は一社も無い。
2. アルバムは死ななかった
2001年にアイチューンズが登場して以来、音楽業界では「アルバムが滅びる」との言説が盛んに語られた。一曲99セントのダウンロードの普及につれて従来のパッケージ販売が成り立たなくなるという理論だ。
ストリーミングの勃興もこのトレンドを推し進めると見られていた。実際、Chainsmokersといったアーティストは従来のアルバムのリリースを行なっていない。有名ラジオパーソナリティのNic Harcourtもビルボードの取材に対し「月に一曲か二曲の新曲をシングルでリリースすることで、アーティストはストリーミングでの存在感を高められる」と述べている。
しかし、2016年の現状ではアルバムは依然として巨大な利益を生みつつある。ドレイクのアルバム「VIEWS」は81分間で20曲を収録し、ビルボードのホット100に多数の楽曲を送り込んだ。ストリーミングの分野でも、多数の楽曲をアルバムでリリースし、その後シングルを毎月リリースすることがプレイリストでの存在感を高めるという結果が報告されている。