スポーツアート(SportsArt)が開発した、最先端の技術を用いた(サイクリングマシンなどの)運動機器は自家動力式で、さらに余剰電力を送電網に戻す仕組みになっている。
コンセプトはきわめて単純。サイクリングマシンをこぐと、その運動エネルギーが電力に変換される。従来の運動機器では、運動エネルギーは何にも変換されず浪費されるだけだが、スポーツアートの機器を使うと、発電された電力は交流電流で電力網に送り返され、建物の電力消費量が相殺される。建物自体には何も変更を加える必要はなく、運動機器を電源プラグにつなぐだけでいい。
「テクノロジーは全て内蔵されているため、外見は従来のサイクリングバイクと何も変わらない」と、スポーツアートのイヴォ・グロッシ副社長は言う。「スポーツアートは大きな可能性を秘めていると確信している。7~8年前のテスラのように」
テスラが現在、世界で最も革新的な企業とされ時価総額が335億ドル(約3兆8,000億円)であるから、グロッシはスポーツアートに高い期待を抱いている。
多くの新興の企業やテクノロジーがそうであるように、その期待はミレニアル世代に関連している。テクノロジーに精通し環境意識の高い同世代は、スポーツアートのコンセプトにぴったり合う。
サクラメント・エコフィットネス(カリフォルニア州のフィットネス施設)の創業者ホセ・アビナは、スポーツアートの成長に大きな期待を寄せている。12月18日にオープン予定の同施設では、スポーツアートの運動機器のみを導入。“完全に持続可能なジム”の実現を目指す。最初は単に、スポーツアートの運動機器で使った電力を相殺するだけだが、アビナは将来的にソーラーパネルを導入する計画で、その資金を調達するためにクラウドファンディング・プラットフォームのゴーファンドミーを利用している。
「最終的には地域の企業に送電をすることだ」とアビナは言う。「我々は地域社会に変化を起こし、環境の現状に対する意識を高めたい。ほかのジムでも環境により良いマシンに切り替えるよう刺激することができたらと思っている」
それがスポーツアートの目標でもあり、同社はそのプロセスをできる限り簡単なものにするべく取り組んでいる。同社の製品は、建物の電気設定を変えることなく、電力網に電気を送り返すことができるだけでなく、運動機器としても十分な競争力がある。
アビナも、同じくスポーツアートの機器を導入しているイギリスのビーチフィット(フィットネス施設)のオーナー、ポール・クレーンも、スポーツアートの運動機器は、より高級なサイクリングマシンなどとさほど変わらず、機能は変わらないと言う。節減できたエネルギー量と税控除の可能性を考慮に入れれば、実質的に差はないか、安い可能性もある。
だがそれも、ジムの利用者がこうした運動機器を受け入れればの話だ。利用者の支持を得るために、ビーチフィットとサクラメント・エコフィットネスでは利用者にインセンティブを提供している(あるいは提供する予定だ)。自分が何ワット発電しているのかがリアルタイムで表示されるようにし、その情報をジム側が保存できるようにしているのだ。
クレーンのジムでは会員に対して、1か月の発電量が500ワット(45分のワークアウトを週に3回分に相当)に達した場合、会費を5%割引している。割引率は最大20%(2,000ワット分)だ。
「貢献度によって会費の割引を行うことで、会員は環境のために何かすることが貢献になるのだと認識できる。このコンセプトを会員たちはとても気に入っている。これを持続可能なフィットネスの実現につなげていきたい」とクレーンは言う。
スポーツアートは、世界中の全てのジムがこうなることを望んでいる。同社の目標が現実になれば、ジムでの有酸素運動も、「ただ自転車をこいでいるだけ」ではなくなる。