1人の職人が1年間に移動する距離
「シュール・ムジュール(ビスポーク) スーリエ」(スーリエとは短靴の意)は、職人との対話から始まる。~カスタマーの足に実際に触れることによって、より深く理解する~。これは120年以上続くブランドの伝統儀式だ。
1895年創業の「ベルルッティ」は、見た目だけではなく、足への体重のかかり方、左右の均衡、幅、土踏まずの反り、甲の高さなど、ゲストの足をあらゆる角度から観察し、究極の履き心地を作り上げていく唯一無二のシューメーカーだ。1足の靴を完成させるには、累計約50時間(ブーツの場合は約150時間)という長い時間がかかる。
納期までの6~9ヵ月の間に行われる打ち合わせは、採寸とフィッティングの3回。採寸を担当する3人の職人たちは、世界中の顧客の要望に対応するため、日々彼らが住む都市を往来している。その移動距離は1人につきおよそ405,544km。
この地球10周分にも相当する数字は、「世界にたった一つだけの靴」を作るためには決して欠かせないものなのだ。
かつての夢は今も世界中を旅している
創業者であるアレッサンドロ・ベルルッティが、イタリアの小さな村セネガリアを出立したのは1882年。その13年後、彼は男性用レースアップ靴の金字塔ともいえる「アレッサンドロ」を創り出す。一枚革で外観上はステッチすらない滑らかなスーリエは、以降ブランドのアイコンとして君臨することになる。その靴のエスプリは、今も職人たちの手によって世界中を旅し続けている。次回の日本セッションは11月後半から。