実写版「攻殻機動隊」 主演が白人のS・ヨハンソンでしかあり得なかった理由

スカーレット・ヨハンソン (photo by Mike Marsland / gettyimages)


予告編で披露された目を見張る映像や派手なアクションシーンから推測するに、この映画には膨大な制作費が投じられている。原作は映画「マトリックス」シリーズに多大な影響を与えた作品とはいえ、SFやアニメのファンを除けば一般の知名度は低く、実写版では人々に劇場まで足を運んでもらう理由を作る必要があった。最も効果的な方法は、既に同じジャンルや似たような役柄で人気を得ている大スターを起用することだ。

セクシーだが危険なサイボーグという役柄に、スカーレット・ヨハンソンほど適した女優はそういない。ヨハンソンは「アベンジャーズ」では冷徹な暗殺者を、「アンダー・ザ・スキン」では人間を次々と襲うエイリアンを、「her/世界でひとつの彼女」では体を持たない人工知能を、「ルーシー」では超人的な脳を手に入れた女性を演じるなど、数々のSF作品で人間離れした魅力を発揮してきた。彼女に「少佐」役をもたらしたのは、こうした作品に大挙して群がった私たちなのだ。同系列の女優としては唯一、ミラ・ジョヴォヴィッチの名が挙げられるが、ヨハンソンほどの人気はない。

もちろん、映画・テレビ業界は常に限界に挑戦し、現状に迎合するのではなく疑問を投げかけるべきだが、超大作で大きなリスクを冒すことは賢い考えではない。エンタメ界での人種的多様性の不足は大きな問題であることは間違いないが、ハリウッド上層部の業界人たちは、自分たちの考えを一般大衆に押し付ける悪しき大金持ちというわけではなく、単に収益性に基づいて行動しているにすぎない。より多様な人々が銀幕で活躍するのを見たいなら、私たちは白人以外をキャスティングした映画をもっと観るべきだ。

どの業界もそうであるように、映画産業は消費者がいてこそ成り立っている。スカーレット・ヨハンソンが少佐役に抜擢されたのは、これが今、最も望まれているキャスティングであることが、これまでの興行成績から示されているからなのだ。

翻訳・編集=遠藤宗生

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