西オーストラリア州にあるカーティン大学のジェレミー・ガルブレイス准教授によると、同国の5つの地域(西オーストラリア、クイーンズランド、南オーストラリア、ニューサウスウェールズの各州とノーザン・テリトリー)にある646軒のワイン醸造所を調査した結果、環境の持続可能性の維持は同国と地球全体を守ることに役立っているだけでなく、ワインの輸出も大きく後押ししていることが明らかになった。
過去の調査では、豪州では女性がトップの役割に就いたワイン醸造所では、持続可能性にかかわる問題への対応が進む傾向がみられる点が指摘されていた。そして、今回の調査ではその理由の一つとして、「女性たちに特徴的な“共通意識”」が挙げられるとの見解が示された。女性たちが持つこうした性質が社会的な絆を強めることにつながり、「男性経営者たち以上に、自然環境に配慮するようになる」のだという。
ただ、こうした女性の特徴が輸出に及ぼす影響は、複雑なものだ。准教授は、持続可能性に関連のある市場は互いに模倣し合うものであると同時に、強制力を持つようになっていると指摘する。つまり、消費者の需要は生産者同士が互いに同調し合い、持続可能な生産方法を生み出すようになるという「連鎖反応」をもたらしているというのだ。
消費者の間で持続可能性を意識したワイン生産を重視する考え方が広まる中で、環境維持のための「世話役」の役割を果たす女性たちが、輸出市場への関心をさらに高めている。
一方、准教授は報告書の中で、豪州のワイン業界に対するいくつかの提言を示している。地域に根差したワイナリーは持続可能な生産方法について、より積極的に行動すべきだという。そうした動きが増すことが、全ての地域にある全ての醸造所にとっての利益を増すことになるためだ。地域にワイナリーが増えれば、訪れる旅行者も増える。
米・豪の共通点
このほかガルブレイス准教授は、リーダーの役割に就く女性を増やすためのより一層の努力が必要だと述べている。先進国全体において、企業のリーダーに女性が占める割合は小さいままだ。
豪州も米国と同様、企業の取締役に占める女性の割合は16%程度にすぎない。世界の人口における男女比はほぼ1対1であるにもかかわらず、両国のトップ企業500社のうち、女性がCEOを務めるのはごくわずかにとどまっている(豪州が3%、米国は4%程度)。