乱戦のアメリカ、遅れる日本 「バックオフィス争奪戦」最新事情

Rawpixel.com / shutterstock.com


さらに、ワトソンのテキストマイニング技術、機械学習の技術を、メールの文面から感情を読み取る「トーンアナライザー」でも活用。相手が急いでほしいのか、悲しんでいるのか、怒っているのか……といった感情を理解し、対応できるようにする。

SNSの技術やワトソンを活用することで、IBMはどこを目指していくのか。行木は言う。

「頭の中に入っているものを、すべてデジタル化したほうがいい。それをAIやロボットが有効に活用できるような環境を作りたいと考えています」

定型作業を片付けてくれるロボット

労働人口の減少が続く日本は今後、人手不足が課題となる。そうした中で注目されるのがロボット技術だ。RPAテクノロジーズの大角暢之はホワイトカラーの事務作業を代行するBizRobo(ビズロボ)を提供。RPA(Robotic Process Automation)は今年、バズワードになったが、フロントオフィス、バックオフィス両方の業務で、ルールに基づきプロセス通りに作業を自動化するのが特徴だ。

「ルーチンワークをロボットに代行させることで、人間がやるべき作業に集中できるようになります。間接部門すべてが対象になるので、コストセンターのダウンサイジングにつながる。人手不足の時代、営業担当者などはルーチンワークをロボットにやらることで、売り上げアップに集中することができる」

RPAは、データ入力やオンラインでの注文書の発行といった定型業務を得意とする。同社は5年前に生命保険会社の窓口業務を受託した。大角は、RPAと金融機関は相性がいいと言う。

「当初はルーチンワークの処理に80人の人手がかかっていたのに対し、RPA導入後は13人まで削減できました。金融機関は事務処理が多いので、導入事例が進んでいます」

一方、外回りの営業職から支持されているのが、システムインテグレータの無限が開発した経費精算システムの「らくらく旅費経費.net」。交通系ICカードを読み込むだけで、経路も金額も読み込んで、記入してくれる。記憶をたどって経路を確認し直す作業もいらなくなるし、調べたデータを手入力する手間も不要だ。

同社によると通勤手当に関する課題は大きく5つあるという。通勤経路の判定、払戻金額の計算、料金改定への対応、煩雑な管理、そして支給履歴の管理だ。精算管理の申請、承認、支給金額の管理をシステム化することで、バックオフィス業務の負荷軽減が期待できそうだ。[後編は10/29公開]


各社のHRテックの取り組み

IBM
IBMは、同社が開発したAI技術の「ワトソン」、SNSなどの最先端の技術を融合し、従業員同士や、取引先とのコミュニケーションを活性化するシステムを開発している。ワトソンは既存の構造化データ、非構造化データを理解、推論、学習。メールの送受信データなどを“学習”し、従来は秘書がするようなメールの緊急度の確認や、対応の要求の有無を判断。人間の作業をサポートする。また、英文の表現から、メールに含まれる感情も読み取る。

RPA TECHNOLOGIES
RPAテクノロジーズの「BizRobo!」シリーズは、ロボットソーシング。定型業務の事務作業を自動代行するサービスで、すでに100社以上に導入されている。「ロボット」と言っても、バックオフィスの生産性向上のためのソフトウェアで、膨大な情報収集、タイムリーな処理を求められる業務や、ファイルからシステムへの転記、確認といった定型業務を代行してくれる。定型作業を自動で代行するほか、一部非定型作業にも対応できる。

––RPAテクノロジーズ、大角暢之社長談
「ホワイトカラーの生産性を上げようと考えていても、細かいルーチンワークは人にしわ寄せが行く。その解決策が、「BizRobo!」シリーズだ。今年に入り、各コンサルティングファームが「RPA」について言及するようになり、バズワードになった。こうした動きを受けて今年7月、社名を「RPAテクノロジーズ」に変更、一般社団法人日本RPA協会も設立した。日本でRPAを盛り上げ、普及を図っていきたいと考えている」。




文=大木戸 歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事