AT&Tやベライゾン等の企業はここ数年、通信インフラという「土管ビジネス」から脱出する動きを進めてきた。通信インフラ事業がコモディティ化する一方で、フェイスブックやグーグル等のテック企業は数十億ドルを投じ、独自の通信インフラを整備する動きも進めている。
ここ十年ほどで、ケーブル事業者のコムキャストはNBCユニバーサルを買収し、ベライゾンはAOLやヤフーを買収。AT&Tは昨年、ディレクTVを買収していた。
ここから見えてくるのは通信事業者が、コンテンツを配信するだけでなく、その流れの全てをコントロールしたいという欲望だ。背景には、消費者がこれまで以上にコンテンツの消費額を増やしていることが挙げられる。
デジタルコンテンツへの支出額は2017年には1,800億ドル(約18.7兆円)に達すると見込まれる。これは2016年の1,400億ドルから30%の上昇だ(ジュピターリサーチのデータ)。
成長の主要因は既存のテレビの課金チャンネルではなく、ネットフリックスやHulu、アマゾンプライムのようなストリーミングサービスだ。視聴者らが既存のテレビを捨て去り、デジタルメインの視聴に移行する流れの中で、AT&Tもその流れに乗りたい意向がある。
脱「土管ビジネス」狙うAT&T
AT&Tは今年、スマホからも視聴可能なサブスクリプション型のTVサービス「フルスクリーン」を立ち上げた。ベライゾンも今年9月、同種のサービス「G090」を設立。コムキャストも同時期にミレニアル世代をターゲットにした「ワッチャブル」を始動させた。
今回の買収によりタイムワーナーの膨大なコンテンツをAT&Tは手に入れる。CNNを筆頭にHBOのゲーム・オブ・スローンズ、カートゥーンネットワーク、NBA TV、映画「ハリー・ポッター」を生んだワーナー・ブラザーズ等を手に入れることになる。「ハリー・ポッター」は劇場収入のみで77億ドル(約8,000億円)を生み、さらに20億ドルを家庭エンタテイメント分野で創出した。