心躍るドラマを生む全英オープンの舞台「ロイヤルトゥルーン」の魅力

8番ホールのグリーンは、5つの深いバンカーと複雑な起伏の丘が取り囲む。


このホールには数々の逸話がある。1950年にはドイツのアマチュア選手だったヘルマン・ティッシーズが15を叩いた。

そうかと思えば、1973年、当時71歳のジーン・サラゼンは、2日間プレーして合計3ストロークで上がっている。しかも、パターを一度も使わずに。なんと彼は、初日をホールインワンで終え、2日目もティーショットをバンカーに入れたあと、2打目をチップインしてバーディーをとったのだ。まさに神業である。これはメジャーでのホールインワン記録としては史上最年長での達成だ。

メジャー大会のショートホールでは、過去5回全米オープンの舞台となったペブルビーチ・ゴルフリンクス7番ホールの109ヤードが最も短い。しかし心躍るドラマを生み出すことにおいて、ここロイヤルトゥルーンの8番と、マスターズが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの12番に勝るものはない。

今年の全英オープンは、相当な雨が降ったものの、風はそれほど強くなかった。北西の風が吹き出すと特に後半のインはどうしようもなく難しいと言われているが、最終日の午後はよく晴れており、激しい戦いを繰り広げた選手たちへの、神様からの贈り物のようだった。それでも、選手やギャラリーは相当寒そうな様子で、日本の熱帯夜に苛まれながらテレビ観戦していた私は「早くリンクスの旅に出ないといけないな」と、居ても立っても居られなくなった。

もはや「ゴルフ病」の域に達しつつあるのではないか、と自嘲気味に思う今日このごろである。

それでは皆さん、来年のロイヤル・バークディールでお会いしましょう!

名ドラマの舞台、その名は郵便切手

ロイヤルトゥルーンは、スコットランド最大の都市グラスゴーから南に50キロ下った海岸線沿いにある。全英オープンの舞台となるオールドコースは全長7,190ヤード、パー71。全英オープン発祥の地プレストウィック、過去4度開催のターンベリーに並び称される名リンクスだ。写真は名物8番ホール。123ヤードという短さながら、その特異な形状と自然のいたずらにより数多くのドラマを生んだ。


こいずみ・やすろう◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。

小泉泰郎 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事