「テレビ離れ」に悩む米MTV 動画サイトVevoと提携で復活の期待

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8月28日、今年も米音楽業界の祭典「MTV ビデオ・ミュージック・アワード」(以下、VMA)が開催された。最優秀ビデオ賞にはビヨンセの「Formation」が選ばれるなど、見どころ豊富な内容だったが、うっかり見逃してしまった音楽ファンには動画サイトのVevoをお勧めする。Vevoでは現在、アリアナ・グランデやニック・ジョナス、ザ・チェインスモーカーズやブリトニー・スピアーズといったVMAの主要アーティストらの動画を公開中だ。

かつてはMTVのサイトでしか見られなかったVMAのパフォーマンスが、今年からVevoで視聴可能になった。Vevoの広報担当はフォーブスの取材に対し「今回の提携でバイアコム傘下のMTVは月間185億回以上の視聴機会を獲得し、今後さらにデジタル視聴の機会を拡大していきます」と述べた。

MTVは音楽ビデオのパイオニアだが、視聴者のテレビ離れが進む中でその優位性の維持に苦戦してきた。2011年以降、18~49歳の視聴率は50%も下落している。MTVの目玉コンテンツであるVMAも、2014年の830万人から昨年は500万人まで視聴者数を減らしていた。今回のVevoとの提携にはTVの視聴率低下をウェブで補う意図がある。

2009年に設立されたVevoは「デジタル世代のMTV」を目標に、無料のストリーミング動画配信でミレニアル世代にアピールしてきた。それ以来Vevoは着実に視聴者数を増やし、今では月間187億回の再生回数を記録している(自社プラットフォームに加え、YouTubeその他の他社プラットフォーム経由の視聴回数の合計)。動画コンテンツ全般で言えば、王者はYouTubeだが、音楽ビデオ視聴に関してはVevoがトップというポジションを築きつつある。

今回のMTVとの提携はVevoがこのところ進めているコンテンツ拡充の一貫と言える。既にユニバーサル・ミュージックやソニー・ミュージックと配信契約を締結済みだったVevoは今年8月、ワーナーミュージックとも契約を結び、3大レーベルの全てとパートナーシップを結んだ。

Vevoは7月にはサイトのデザインを刷新し、グローバルな業務拡大に向け3億ドルから5億ドルの資金調達を準備中とも伝えられる。また、今秋には有料のプレミアムコンテンツの配信も開始するという。

現状でトラフィックの大半をYouTube経由で得ているVevoを、デジタル世代のMTVと呼ぶのはまだ早すぎるのかもしれない。しかし、MTVの動画を独占配信できるのは大きなメリットであり、今後のさらなる飛躍がVevoには期待できそうだ。

編集=上田裕資

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