ビジネス

2016.08.25

医師から起業家へ、バイオベンチャー「ヘリオス」鍵本忠尚のこれまでとこれから

株式会社ヘリオス 鍵本忠尚 (photographs by Irwin Wong)


そんな鍵本に白羽の矢を立てたのがiPS細胞による治療の実用化を目指していた理化学研究所の高橋政代だ。高橋にiPS細胞の製品化を依頼され、ヘリオスを設立したのが、11年2月。

福岡にある自宅のガレージで、100万円の自己資金で始めたビジネスは、13年には、30億円の資金を調達するまでに成長、昨年6月にはマザーズ上場を果たす。成長を続けるヘリオスだが、その最大の秘密は“経営の軸”にある。

「患者さんに薬を届けたいという強い思いが僕の“経営の軸”です。その軸は、3つの三日月の気持ちに寄り添ったことで生まれ、その後、数々の修羅場をくぐりぬけることで、強く太くなっていきました。ぶれない堅固な軸があったからこそ、あきらめずにここまでくることができた。そして、そんな軸を持っていることが提携企業に伝わったことで多くの出資に繋がり、順調な経営に結びついているのだと思います」

現在、鍵本は、“日本発”と“海外発”の二本柱で経営を進めている。日本発のiPS細胞由来の製品のデファクト・スタンダードを取って世界展開を進めるとともに、財務基盤を強化して安定経営を行うため、海外発の細胞製品を日本で治験し、早期承認を得て売り出そうとしているのだ。年末には、脳梗塞を治療するための海外発の細胞製品の治験を開始するという。

「人類が“生きる価値”を増やしていけるような薬を作り、届けたい」

鍵本の初心は揺るぎない。そこには、患者を見つめる医師の眼差しがあった。

かぎもと・ただひさ◎1977年、熊本県出身。九州大学医学部卒業。2005年、アキュメンバイオファーマを起業。11年、日本網膜研究所(現・ヘリオス)を設立。15年に東証マザーズ上場。

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文=飯塚真紀子

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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