グーグルマップの元製品責任者リオー・ロンと、グーグルの自動運転車部門の元技術責任者アンソニー・レバンドフスキは、自動運転技術をより早く導入できる分野として、長距離輸送トラックに目をつけ、今年1月に自己資金でOttoを設立した。彼らはトラックオーナーにソフトウェアやセンサー、カメラ、レーダー、LIDAR(光レーダー)、自動操縦とブレーキ技術のパッケージを提供し、18輪の超大型トラックでも自動運転が可能にするといいう。
ロンはインタビューで、「トラックは高速道路の走行時間が長い。そして高速道路は道が単純で、歩行者もいないため、自動運転技術がより導入しやすく、地図も作りやすい」と説明した。一方、大型トラックが高速道路を走行する時は、ブレーキをかけるにも時間がかかり、障害物をよけるための回避操縦も必要となる。
しかし、ロンによると、大型トレーラーは乗用車に比べセンサーや探知機を取り付ける空間が大きく、電力が大きいことが強みだという。
アマゾン等大手での採用を視野に
Ottoの90名のチームは今、ボルボのトラック5台に自動走行システムを搭載し、カリフォルニア、アリゾナ、ネバダ各州で1日に3回、週に7日の走行テストを行っている。現在、米国で自動運転技術に関するルールを制定しているのは9つの州とワシントンD.C.のみで、連邦政府は、特段の規制を持たない。
ただ、今年5月にテスラのモデルSが自動運転中に自損死亡事故を起こし、自動運転技術に関する明確なルールを求める声が高まっていることから、米運輸省高速道路交通安全事業団(NHTSA)が自動運転技術の導入に向けた新たなガイドラインを発表する見込みで、ロンはそれがOttoの製品の実用化に影響を与えるとみている。
Ottoのターゲットは、自分の車を連続稼働させて、配送効率を上げたいトラックのオーナー運転手だ。現行のルールでは、トラックドライバーの運転時間は1日最大11時間と定められ、連続労働時間も14時間に制限されている。
米調査会社AutoPacific社長のジョージ・ピーターソンは、「運転時間を制限されているトラック運転手にとって、自動運転は魅力的なものだろう。そして独立系運転手だけでなく、アマゾンなど大手物流事業者も、輸送力の向上を望んでいる。配送分野には多くのニーズがある」と指摘した。
Ottoは安全性を保証するため、システムのテストを続けており、現時点ではトラックを自動運転カーに改造するために必要な金額を明らかにしていない。実用化について、ロンは来年以降の早い時期を目指しているとした。
しかし、Ottoのプロジェクトについては現場のドライバーから、不安の声もあがっている。オハイオ中部からアラバマまで農産物を配送しているベテラン運転手のダグ・オーバリンは、「トラックを自動運転させて車内で寝るなんて考えられない。それは恐ろしいことだ」と語った。