ナイキ創業者が若者たちにアドバイス、回顧録に綴られた記憶

ナイキの創業者で会長のフィル・ナイト (Photo by Scott Olson/Getty Images)

ナイキの創業者で会長のフィル・ナイトが最初に就いた百科事典の販売の仕事は、うまくいかなかった。次に始めた投資信託の営業では、もう少しましな結果を残すことができた──。そして、ナイトがその後に売り歩くことになったのは、愛車のグリーンの1963年型プリムス・ヴァリアントのトランクに詰め込んだ、ランニングシューズだった。

なぜナイトが靴を売ることに非常に長けていたか、彼自身の言葉を借りれば、それは「売っていたわけではない」からだ。「走ることを自分の信条としていた。毎日外に出て何キロか走れば、その人にとって世界はより良い場所になる…自分が正しいと信じる考えに逆らうことはできない」

先ごろ出版された回顧録「Shoe Dog」(シュー・ドッグ)の中でナイトは、ナイキ起業について振り返ると共に、破産寸前に陥ったことや多額の負債を抱えたことについて、そして数々の拒絶、争い、次から次と降りかかった危機についても触れている。

「信じる」ことを大切に

ナイトはこの本の中で、何かに卓越した存在になりたい、他の人とは違う人間になりたい、世の中に足跡を残したいと考えるすべての若者たちへのアドバイスを記している。

まず、何かを売りたいなら、その売りたいものを信じなくてはならないという。自分がそれを正しいと思う気持ちは、否定することができないからだ。次に、「ばかげた考え」を追求することだと指摘する。疑いの目を向ける人たちに、決して屈してはならないという。

自らの経験を振り返り、「20代半ばの若者たちの誰もがそうであるように、なぜか“実存的不安”に混乱し、将来への恐怖や自分自身に対する疑念があっても、世界はばかげた考えによって成り立っていると確信した」と話す。

ナイトはもともと、世界的なアスリートを夢見ていた。だが、それはかなわなかった。オレゴン大学の在学中には選手として活躍したが、特別に優れた成績を残すことはできなかった。

やがて、ナイトは「価値がある、楽しい、自分に合っていると思える何か驚くような、そしてありそうもない夢を追いかけよう。アスリートらしい一意専心と決意でそれを追求しよう」と決めた。その新しいアイデア、それは日本製の高品質のランニングシューズを輸入・販売することだった。
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編集 = 木内涼子

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