クックは北京訪問で、同社に対するネガティブな報道を抑えようとしているのかもしれない。アップルは中国での業績が振るわないほか、現地メディアは、中国のアップストアに掲載されているアプリが機能しなくなったり、消されたりしていると報道している。
中国政府は数週間前、アップルのiTunes MoviesとiBooksを理由を明示せずに閉鎖した。現地ではアップルがiPhoneの名称をめぐる商標権の訴訟で敗訴したことや、直近の四半期でアップルの中国での売り上げが26%落ちたことなど、悪いニュースが報じられている。
アップルの株価は4月中旬以降17%下落し、時価総額800億ドルが吹き飛んだ。アップルにとって中国は、今回の大きな危機の震源地と言える。中国での販売26%減という数字は、世界全体のマイナス幅を大きく上回る。
政府高官らと緊急会談をセッティング
アップルが将来の成長のけん引力ととらえているコンテンツ配信サービスの突然の停止は、不吉の前兆のようにも見える。同社は今年2月、アップルペイの決済サービスを中国で開始し、同国で電子決済サービスを提供する最初の外国企業になった。
クックは中国市場でのイメージ向上や、新商品、サービスのスムーズな承認のために、毎年2回は中国を訪問しているが、普段はその旅行計画が事前にリークされることはない。
政府がこの手の情報を漏らすことは考えにくく、ロイターの報道のリーク元は、間違いなくアップルの関係者だろう。普段は口の堅いアップルが、株価の急落や中国発のネガティブな報道を食い止めるために、情報をリークしたと考えるのが自然だ。
中国メディアの財新は、中国のアップストアで数日間に渡る大規模な障害が発生したと報じた。ただ、この手のトラブルは中国では日常茶飯事で、筆者が試したところ、アップル以外にも多くのサイトがアクセス不能になっていた。中国政府がこの件について、説明することはないだろうが、何かの政治的なイベントと重なったのかもしれないし、新しい検閲システムのテストの可能性もある。
アップルは中国での難局に直面し、クックの北京訪問を大急ぎでセッティングし、わざわざリークしたように感じる。それはアップルらしからぬ行動だ。
クックは、中国のプロパガンダ担当高官の機嫌を取ることで、状況好転のきっかけをつかめるかもしれない。しかし、中国での売り上げ回復には時間がかかりそうだ。それは政府の力でどうにかなるものではなく、中国のスマホマーケットの激しい競争の結果だからだ。