ゴルファーの憧れ、「北の至宝」ロイヤル・ドーノック

getty images (VisitBritain / Harry Williams)

リンクス好きのゴルファーならば、その名を聞いただけで胸がときめき、一度は行ってみたいと思うゴルフ場がある。トム・ワトソンをして「5大陸屈指、自然の傑作」と言わしめたロイヤル・ドーノックだ。2009年7月、筆者はその憧れの地に、ついに足を踏み入れた。

スコットランドの北部ハイランド地方に、稀有の自然景観を誇るゴルフコースがある。北の至宝と謳われるロイヤル・ドーノック・ゴルフクラブである。

その景観の素晴らしさと、1616年、今から400年も前にプレーが行われていたことが記録に残る歴史的なリンクスコースであるが、1971年と1984年にスコットランド女子オープンが開催されているだけで、全英オープンが一回も開催されていない。その理由はあまりに遠いこと、世界的レベルの大会を開催するには観客席などの設置をするスペースがないことなど、さまざまな理由が取りざたされているが、一体どれが本当なのかは定かではない。
 
しかし、全英オープンを5回制しているトム・ワトソンは、ドーノックを五大陸屈指のリンクスコースだと絶賛し、私はこれ以上のコースでプレーしたことはない、自然の傑作であるとまで言い切っている。世界中の多くのゴルフ好きが毎年、まさに巡礼者のごとくこのゴルフ場を訪れるのも頷ける。

ドーノックの紋章には、馬の蹄鉄を誇らしげに掲げる猫の姿が描かれている。その昔、この地サザーランドに侵入してきた古代スカンジナビア人が乗った馬の後足から噛み切った蹄鉄だという。クラブハウスでは、その紋章がラベルとして使われたキャプテンズスコッチが売られている。もちろん、荷物になることなど考えずにすかさず一本購入である。

話の順序が逆になったが、私たちが、このコースでプレーする機会を得たのは2009年。ドーノックの街はなんとも小洒落た感じで、数は少ないもののお土産物屋や素敵なレストランが幾つかあった。泊まったのは、定番のロイヤルゴルフホテル。部屋から見えるコースの雰囲気も最高だが、朝食も素晴らしい。典型的なスコティッシュブレックファーストで、真夏とはいえ涼しいこの地にとても合う。温かいビーンズ、羊の内臓を羊の胃袋に詰めて茹でた当地特有の伝統料理ハギス、そして肉厚のベーコン、ブラウントーストにはハチミツを塗って美味しいティーをいただく、書いているだけで涎が出てくる。

さて、腹ごしらえが終わったところでいざスタートだ。
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小泉泰郎 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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