水と衛生の課題について、元国連職員でもあるデロイト トーマツ コンサルティング執行役員ディレクター、田瀬和夫に話を聞いた。
「山地、河川、森林、湿地の管理」もニーズがある
水道普及率25%、70%が漏水・盗水、給水は1日10時間という過酷な環境であったカンボジアの首都、プノンペンに、北九州市の水道職員が派遣されたのは1999年のこと。北九州市が独自に開発した24時間監視システム「配水ブロックシステム」を導入し、漏水率10%以下という水準を実現。06年には飲用可能宣言も出され、今では24時間、いつでも蛇口をひねれば安心・安全な水が飲める環境にある。
この経験を生かし、北九州市は今、130を超える民間企業、関係機関を組織化し、官民連携で海外水ビジネスを推進している。
「水と衛生の問題は、途上国において、生死に直結する、かなり重要な事項です。アジアの国では、日本の社会インフラを取り入れようとしている国も多く、上下水道、ゴミの処理、健康食品といった、保健、プラスアルファの事業を扱う日本企業にとってはチャンスが大きい」(田瀬)。
また、山地、河川、森林、湿地の管理といった、周辺技術も多くのニーズがある、という。「安全でよい水をたくさん持っている、国の責任と機会があるのでは」(同前)。
北九州市の事例のように、地方の民間企業が海外へ、直接進出できる可能性も秘めている。
たせ・かずお◎1992年外務省入省。2004年より国際連合事務局・人道調整部・人間の安全保障ユニットに出向。14年5月に国連を退職、6月より現職。公共政策と民間利益の『共創』をテーマに活動する。