ビジネス

2016.03.22 16:31

「日本」を背負い、とことん現地にコミットして勝つ


谷本:どのようにして売上げにつなげたのですか?

徳重:EVってとても難しくて、新しい市場だし、日産のリーフ(日産のEV)でさえハイブリットほどには売れてない。環境やエネルギーにやさしいという特徴があっても、アジアの新興国では、個人レベルの価値観には響かないんです。こういう人たちがサクサク買ってくれるにはどうしたらいいのか、徹底的に市場調査を行いました。

開発面では、顧客になるのはどんな人か分析して、そこにミートしたものづくりをした。次には「値段が高い」などいろいろな注文をつけられ、3回ほどプロタイプ車体の作り直しをする。さらに販売する土地の地形に合わせた品質向上もする。生産面でいうと、生産ラインを作り、現地パートナーを見つけ、現地工場のリーダーを作りします。政府の認可を得て、やっと量産が始まる。それを、ものすごいスピード感で行いました。

ほとんどのベンチャー企業、中小企業ができていないことなんですけど、僕たちは現地に張り付いて開発・生産・販売の全てを手がけるんです。例えばインドには合計で10人の日本人社員が駐在していて、日本食の全くないインドの田舎(州都)に一人ずつ張り付けています。これが急成長の鍵でした。

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インドにあるテラモーターズの工場

谷本:EV業界は、国内外ともに参入障壁が決して高くないように思うのですが、テラモーターズの圧倒的な強みや優れている点はどこにあるのでしょうか。

徳重:もちろん、電池の寿命が長いというテクノロジーの部分もありますが、日本ブランドの力って本当に偉大なんです。その無形資産を日本企業は活用しきれていない。価格、品質、販売網のすごさ、メンテナンス力、資金力、人材、戦略など、あらゆる点に置いて、日本は他の国より優れている。5点満点で評価すると、ほとんど4〜5点なんです。新興国で戦っていると、特に感じます。ただ一つ欠点なのが、価格。そこを克服すれば、圧勝できます。

ここが僕たち独自の強みであり、苦労した部分なのですが、マーケットインな発想で現地の顧客にミートした価格を徹底的に調査して、照準を合わせているんです。価格がベンチマーク、市場でよく売れている製品の2割増以内に抑えるものづくりができれば中国企業やローカル企業相手でも勝てます。これを実行するかしないかが、新興国のボリュームゾーンのビジネスの肝です。ベンチャー企業は市場が全てです。

あとはスピード。進化するスピード感をつけるということ。価格、スピード、リスクテイク。あとは「絶対勝つ」という気持ちで、日本ブランドを使って現地でとことんコミットする。これができれば、たとえアジアの強豪がきたとしても僕はそれだけで勝てると思います。

文=吉田彩乃 編集=谷本有香 人物写真=藤井さおり

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