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2016.02.21

「トランプ大統領」、嫌なら移住を カナダの島が米国民に呼び掛け

Photo by Spencer Platt/Getty Images

ツイッターの投稿を信じるなら、米国の不動王ドナルド・トランプが共和党の大統領候補になる可能性があることについて、左派の米国人たちは慌てふためいている。そして、もし2016年11月にトランプが大統領に就任することになれば自国を捨てようと考えているようだ。

メディアに詳しいあるカナダ人はこれを知り、こう考えた──彼らに行き場を与えてあげたらどうだろう?

カナダのケープ・ブレトン島に住むラジオDJ、ロブ・カラブリースは2月15日、トランプの勝利が気に入らない米国人に移住を呼び掛けるためのウェブサイトを立ち上げた。

サイトの名称はずばり、「ドナルド・トランプが勝ったらケープ・ブレトン島へ」。トランプが米国の次期大統領になる可能性があるとして、「こんな国からは逃げ出そうと決意したら、ケープ・ブレトン島への移住をお勧めしたい」と記載している。

カナダ・ノバスコシア州の沖合にある海岸の景色が美しいこの島は、深刻な人口減少に悩まされている。カラブリースは、新たな住人が大量に増えれば、島の経済を救えるのではないかと考えているのだ。

フォーブスの取材に対して同氏は、「持続不可能なペースで人口が減っている。島の人口は年間約1,000人減少しており、適切な対策を講じなければ、向こう20年間にわたりこのペースで減り続ける見通しだ」と語った。そしてこの点こそが、今回の呼びかけの理由だという。

ただ、米国人に自国を捨てようと考えさせた大統領候補は、トランプが初めてではない。英紙ガーディアンによると、2004年の米大統領選の日、カナダ移民局のウェブサイトには過去最多の17万9,000件のアクセスがあった。サイトを訪れた人の大半は、米国人だったとみられる。また、カナダ政府のデータによれば、米国からカナダへの移民は2005年以降、年間平均8,700人だが、2008年にも急増していた。

ケープ・ブレトン島は、こうした大統領選の結果と流入する移民の増加の関連性を活用することができるかもしれない。カナダ統計局によると、2006~11年の間に、島の人口は14万2,298人から13万5,974人に減少している(-4.4%)。さらに、2013年には10万823人にまで減少した。

島では主要産業だった石炭業界が低迷し始めた数十年から、人口が減少し始めたという。島にある大手炭坑会社はかつて、国内産出量の40%に相当する石炭を産出していたが、1980~90年代にはいくつもの炭坑が閉鎖。最大規模だった炭坑も、2001年に操業を停止した。

移住してくる人が大量に増えれば、島の経済は活性化されるのだろうか?それは何とも言えない。労働力(人口など)の増加が経済的利益につながるとした調査結果はあるが、人が増えても問題は半分しか解決しない。そこには雇用がなくてはならない──いや、豊かな退職者たちが増えればいいのかもしれないが。

このサイトをみると、島には明らかに、観光業に潜在的なチャンスがある。自然の美しさと受け継がれるケルト人の伝統は、十分なセールスポイントになりそうだ。だが、カラブリースが関心を持っているのは単なる観光客の呼び込みではない。島の生き残りのために観光業は欠かせないが、目標に掲げるのは新たな住民たちの獲得だ。ただ、サイトはカナダ政府とは無関係だ。

トランプ大統領の誕生を願っているのかと尋ねた。するとカラブリースは、「もちろんそんなことはない」と答えた。さらに、島はトランプのファンも大歓迎だという。

編集 = 木内涼子

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