サービス

2026.11.05 09:33

データセンターのジレンマ:地域住民の反対運動が「ビジネス上の制約」となった理由

Adobe Stock

Adobe Stock

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

何十年もの間、地域社会は発電所、高速道路、ごみ埋立地などの建設に反対闘争を繰り広げてきた。その最新の標的となっているのがデータセンターだ。データセンターを建設する企業や、それに依存する企業にとって、住民の反対運動はもはや単なる広報(PR)上の問題ではなく、スケジュールや資本を左右する大問題となっている。

2026年のギャラップ調査によると、回答したアメリカ人の10人中7人が地元地域へのAIデータセンター建設に反対すると答え、そのうち48%が強く反対している。Data Center Watchの調査によると、2026年第1四半期だけで全米で少なくとも約1300億ドル(約20兆6000億円)相当の75件のプロジェクトが地域住民の反対によって阻止または遅延された。第2四半期にはさらに約680億ドル(約10兆8000億円)相当の45件のプロジェクトが加わった。コンピューティング容量が予定通り稼働することをロードマップの前提としている経営幹部にとって、この問題は無視できない重要なコスト要因となっている。

しかし、この反対運動において筆者が強い感銘を受けるのは、反対運動そのものが、まさに運動が阻止しようとしているインフラを通じて組織化され、撮影され、投稿され、共有されているという点だ。データセンターを脅威と呼ぶバイラル動画もデータセンターにアップロードされたものだ。署名活動、公聴会を調整するグループチャット、市議会での採決のライブ配信――そのすべてが、反対運動の対象となっている建物を経由して運用されている。

これは公聴会で主張すべき反論ではなく、戦略上の事実だ。根本的な需要が消え去ることはないため、この制約は一時的なものではなく構造的なものだと言える。これを一過性の感情の波として扱う企業は、何四半期分もの時間を無駄にするリスクを負うことになる。

反対運動の本当のコスト

これらの反対運動が勢いを増しているのは、最も強い反対理由の多くが財政やインフラに関連しているからだ。

PJM(米最大の地域電力網運用機関)の例を見てみよう。同機関の独立市場監視人は、既存および予測されるデータセンターの電力負荷によって、直近4回の容量オークションにおける容量市場収益が294億ドル(約4兆6500億円)増加したと試算している。これは同期間の総容量課金額の46%に相当する。干ばつに悩まされる地域社会が大水量を消費する施設に疑問を呈するのは、ヒステリーではなく単純な計算結果だ。そして、時価総額1兆ドル(約158兆円)規模の企業が、恒久的な雇用をほとんど生まない建物に対して手厚い税制優遇措置を受けるとき、地元の行政担当者が有権者は何を得られるのかと問うのは当然の権利だ。こうした懸念には、プロジェクトが公聴会に持ち込まれる前に回答が用意されていなければならない。

エンジニアリング技術の進化

技術革新(エンジニアリング)のスピードは、世間の認識よりもはるかに早い。現代の最新施設では、水を取り込んで放流し続けるのではなく、システム内で水を循環させる「クローズドループ冷却」を採用することが可能だ。その他の設計では空冷に大きく依存していたり、事業者が飲料水の代わりに再生処理された下水を使用したりしている。

マイクロソフトの発表によると、同社は2025年度、グローバル全体での事業活動において取水量よりも多くの水量を補給(ウォーター・リプレニッシュ)し、「2030年までにウォーター・ポジティブを達成する」というコミットメントに向けた節目を迎えた。また、2025年には同社が所有するデータセンター群の約90%で、水消費を最小限またはゼロに抑える高効率の冷却システムが使用されていたという。

廃熱も価値ある資産に変えることができる。デンマークでは、マイクロソフトがデータセンターからの廃熱を地域の地域暖房ネットワークに供給することに合意した。関係企業によると、このプロジェクトにより約6000世帯の年間暖房需要を賄うことができるという。

電力供給の面でも同様のシフトが起きている。大手IT企業は、数百メガワット、場合によってはギガワット単位の原子力協定を結んでいる。メタは、2035年までに最大6.6ギガワットの原子力発電容量を確保するのに役立つ協定を発表した。だからといって、データセンターが送電網(グリッド)から完全に切断できるわけではない。電力負荷が大きすぎるからだ。しかし、それを基準にするのは間違っている。現場で発電されるすべてのキロワットは、その瞬間に外部から供給する必要のないキロワットなのだ。

筆者はその考え方をもう一歩進めたいと考えている。データセンターは広大な外被(エンベロープ)を持ち、明かり取りの窓ガラスをほとんど必要としない巨大な建物だ。その表面の1平方フィート1平方フィートは、どうせ建設されることになる。筆者がすべての建物について自問する問いが、ここでは特に説得力を持つ。「その表面は受動的なのか、それとも生産的なのか?」という問いだ。

建材一体型太陽光発電(BIPV)は、太陽光パネルを後から付け足すものとして扱うのではなく、発電機能を建物の外皮に直接組み込むことができる。ハイパースケール施設の全電力負荷を供給できるわけではないし、供給できるかのように説明すべきでもない。しかし、自家消費電力の一部を現場で生成する施設は、送電網からの限界電力を削減すると同時に、本来なら受動的であるはずの建物の一部を生産的な資産に変えることができる。

「住民側の交渉力」を設計要素として捉える

現在、地域住民は実質的な強い交渉力を持っている。データセンター開発事業者やそれに依存する企業にとって、その交渉力はビジネス上の制約であるが、リーダーがその枠組みの中で対処し、最終的には周辺地域との関係を強化するために活用できるものでもある。

データセンター開発事業者は、送電網の増強費用は誰が負担するのか、水はどこから調達するのか、どのような冷却技術を使用するのか、需要のどの程度を現場で発電・管理できるのか、地域社会はどのような見返りを得られるのかといった質問を住民から受けることを予期すべきだ。具体的な回答が記された文書を用意して立ち上げられたプロジェクトは、自治体の担当者に対して、完成予想図や雇用の試算値だけでなく、評価するための具体性を提供する。つまり、こうした事項は公聴会ではなく、設計段階で決定しておく必要があるということだ。公聴会まで対応を先送りすることは、エンジニアリングの問題をスケジュールの遅延問題へと変えてしまう。

リーダーにとっての意味

データセンター需要に妥協の余地はない。バックアップされるすべての写真、送金されるすべての決済、取り出されるすべての医療記録、すべてのAIへの問い合わせは、データセンターのおかげで成り立っている。デジタル社会を支えるインフラはどこかに存在しなければならず、現在それを必要としている組織が、将来的にその必要量を減らすことはない。

交渉可能なのは、それがどのように建設されるかだ。経営幹部は、地域住民の反対を単なるコミュニケーション経費として処理し続けることもできれば、それを設計上の要件として扱い、反対意見が出される前にあらかじめ懸念に応えることもできる。

2026年上半期はすでに十分な警告を発している。地域社会からの受け入れは、エンジニアリングが完了した後に処理すべき事柄ではない。それ自体がすでに、エンジニアリングのプロセスの一部となっているのだ。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事