リーダーシップ

2026.11.04 10:33

自身の「限界」を知ることが、リーダーにとって重要なスキルである理由

Adobe Stock

Adobe Stock

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

キャリアの初期、リーダーが身につけるべき最も重要なものは能力だと考えていた。スキル、知識、技術的な専門範囲などだ。私は機械工学を学び、輸出業務に従事し、工場建設を監督し、市場の読み方を学びながら、長年にわたってそうしたものを蓄積してきた。だが、誰にも教えてもらえず、理解するまでに何年もかかったのは、自分の限界を直視することのほうが、それらすべてよりも重要だということだった。

私は建材会社をほぼ30年にわたって率いてきた。40カ国の市場へと成長を遂げ、国際的な賞を受賞した製品を世に送り出す一方で、公の場で失敗に終わった製品もあった。そしてブラジルの製造業者が直面するあらゆる種類の圧力──高い税率、複雑な規制、通貨変動、エネルギーコストの上昇──を乗り越えてきた。その全てを通じて、私が最も誇りに思う決断は、大胆な行動ではなかった。自分が何を知らないのか、あるいは何が得意でないのかを認識し、それに応じて行動した瞬間だった。

問題は「失敗率」ではない

失敗について尋ねられると、私は自分が確信するようになったことを伝える。「失敗率は成長への野心に比例する。長年にわたって売り出した製品の中にはうまくいかなかったものも複数あったが、成功したものもあり、差し引きの収支はこれまでも現在もプラスだ。自身の限界を認識することは、自身の能力を認識することよりも重要である」

多くのリーダーシップ論は、自らの強みを洗い出し、長所を伸ばし、自信を示すことを促す。そうしたことも重要だ。しかし、自分が不得意なことを挙げられないリーダーは、組織にとってのリスクとなる。知識や経験が浅い分野にまで無理に手を広げ、自分の盲点をそのまま反映するような人々を周囲に集めてしまう。そして何か失敗したとき、真の実情に向き合うのではなく外部の要素に原因を求めるのだ。

スタンフォード大学経営大学院のアドバイザリー・カウンシルによる研究では、自己認識がリーダーの養うべき最も重要な資質として位置づけられた。また、組織心理学者のターシャ・ユーリッチの研究によると、ほとんどの人が自分には自己認識力があると考えているものの、実際にその基準を満たしているのはわずか10〜15%にすぎないという。このギャップこそが、リーダーシップの破綻の多くが起こる場所である。

実践における「限界」の捉え方

自身の限界を理解することは、限界によって立ちすくむこととは異なる。それは日々の判断に影響を及ぼす、実践的な自律の姿勢なのだ。

私にとってそれは、自社がうまく展開できる製品カテゴリーと、自社の製造における強みの範疇を超えている製品カテゴリーを素直に見極めることを意味してきた。また、市場の機会が本物なのか、単に魅力的(に見えるだけ)なのかを認識すること、さらに、どの決断に自分が直接関与すべきで、どの決断は自分よりもその分野を熟知している人物に全面的に委ねるべきかを知ることを意味してきた。

私が長年にわたり積み重ねてきた具体的な取り組みの1つに、週に1回、工場の現場を直接訪問することがある。監督するためではなく、感覚を補正するためだ。オフィスで意思決定をしていると、現場の現実に疎くなりやすい。レポートだけでは分からないことや、現場の仕組みに対する自分の認識を更新すべき点について、こうした現場訪問が気づかせてくれる。

また、私は自身の直感を検証するためにデータも活用している。経営レポートに使用するソフトウェアツールは、自分の考えを裏付けるためのものではない。自分の認識と現実に起きていることとの間に乖離が生じた瞬間を浮き彫りにするためのものだ。その乖離こそが限界に関する情報であり、留意する価値がある。

同族経営がそれをさらに困難にする理由

祖父が創業し、父が築き上げるのを支えた会社を率いるとなると、「絶対の自信」を演じなければならないという特有のプレッシャーが生まれる。迷いを見せることは先代への不忠になりかねないという感覚や、弱みを認めると周囲の信頼を損なうのではないかという思いにとらわれるためだ。

私の祖父は、中南米で最大級の製材所を設立した。父と叔父はその森林を活用し、建築資材へと加工したユーカリの木にちなんで名付けられた現在の会社を創業した。1987年に入社し、1997年に最終的に社長に就任した際、私はきわめて大きな重圧を背負うこととなった。そうした状況下では、自信を伴った行動を実践するよりも、「自信がある振り」をしてしまう誘惑が確かに存在する。

しかし、世代を超えて続く事業が失敗するのは、まさにリーダーが受け継いだものに疑問を抱かなくなったときだ。市場は変化する。ある世代のリーダーシップのもとで機能したことが、次の世代でも自動的に通用するとは限らない。キャリアの始めの自分に戻って助言できるとしたら、家業の領域以外のビジネスにもっと広く目を向けるよう伝えるだろう。家業自体が学ぶ価値のないものだったからではなく、多様なモデルに触れることで、自らの現状に対して誠実であり続けるための相対的な視点が培われるからだ。

重要なのは「バランス」

だからといって、常に不信や疑念を抱えた姿勢でリーダーシップに臨むべきだと言っているわけではない。当社が持続的に成長してきたのは、製品や市場において真のリスクを取ることを厭わなかったからだ。すでに市場のリーダーであってもさらなる拡大が可能だと信じている。その自信は偽りではない。努力によって得られたものであり、不可欠なものだ。

重要なのは、自分の能力に対する誠実な評価に裏打ちされた自信と、調べようともしなかった欠陥を覆い隠すための自信の違いだ。前者はプレッシャーの中でも揺るがないが、後者は持ちこたえられない。

長年にわたり自分自身の中にその双方を見てきたが、事後にその決断を振り返ったときの感覚で違いがよく分かる。正確な自己認識に基づいて下された決定は時間が経っても色あせない傾向があるが、自信があるように見せるために下された決定はそうはいかないことが多い。

製造業での30年間がそれを教えてくれた。長く存続する企業やリーダーとは、決して失敗をしなかった者たちではない。自らの「限界」がどこにあるかを知る習慣を身につけた者たちなのだ。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事