キャリアに関するアドバイスを求めてAIを利用する女性は、男性とは異なる提案を受けている可能性がある。新たな研究によると、AIモデルは女性に対してより低い目標給与を提示し、柔軟な働き方や育児・介護関連の福利厚生を優先するよう促すことが分かった。一方、男性にはより高い目標給与が提示され、報酬やキャリアアップに焦点を当てるよう助言されている。
研究者らは2つの実験で、AIが生成した8万6000件の回答を分析した。1つ目の実験では、仮想のマーケティングマネジャー、ITマネジャー、経営コンサルタントについて、GPTモデルに交渉の助言を求め、その際に求職者が男性か女性かを明示した。2つ目のより大規模な実験では、4つのAIモデルを対象に、伝統的に男性または女性に多いファーストネームと、それに対応する代名詞を用いて、よりさりげなく性別を示した。それ以外の求職者の資格、経験、雇用状況は同一だった。
具体的には、各モデルに目標給与の推奨と、昇給、ストックオプション、フレックスタイム制、育児休暇など25項目の福利厚生・雇用条件について、交渉でどの程度重視すべきかに基づく順位付けを求めた。ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者によるこの研究論文は、arXivとSSRNに掲載されており、まだ査読は受けていない。
AIは男性により高い目標給与を提示
テストされた4つのAIモデルはいずれも、男性に対して大幅に高い目標給与を推奨した。最も大きな差が出たのはClaudeで、男性には女性より1万6000ドル(約253万円)近く高い金額を推奨した。GPTは約2700ドル(約42万円)高い金額を提示し、GeminiとLlamaの差はそれより小さかった。
AIモデルの研究は容易ではない。モデルの進化が非常に速いため、調査結果が発表される頃には、テストされたバージョンがすでに旧式になっていることが多いからだ。ただし、今回の実験でテストされたモデルのうち2つ、OpenAIのGPT-5.4-miniとAnthropicのClaude Sonnet 4.6は今年リリースされたものだ。研究に含まれたグーグルのGemini 2.5 FlashとメタのLlama 3.3 70Bは、それぞれ2025年と2024年にリリースされている。
調査対象となった職種全体で、給与推奨額の男女差が最も大きかったのは経営コンサルタント職で、男性への提示額は女性より5370ドル(約85万円)高かった。マーケティングマネジャーでは差が1110ドル(約17万円)、ITマネジャーでは745ドル(約11万円)だった。
AIは女性を「柔軟性」、男性を「金銭」へと導く
同様に懸念されるのは、AIが女性と男性を異なるキャリア上の優先事項へと誘導していた点だ。女性には、リモートワーク、フレックスタイム制、育児休暇について交渉するよう促す傾向が強かった。一方、男性には、ストックオプション、昇給、転居支援、退職金パッケージを重視するよう示す傾向が強かった。
研究者らは論文で、「個人から提供された情報ではなく、ユーザーが属するとされる集団の特徴に基づいて推奨を生成することは、差別の一形態である」と結論づけている。
こうしたAIの推奨が伝統的なジェンダー役割を反映しているかを確認するため、研究者らは500人を対象に、どの雇用条件が「一家の稼ぎ手」と結びつき、どれが「ケア労働者(育児・介護者)」と結びつくかについても調査した。研究者らは論文で、「女性候補者に対して優先された条件は、概して参加者がケア労働と結びつけたものであり、男性候補者に対して優先された条件は、稼ぎ手であることと結びつけられたものだった」と結論づけている。
AIがジェンダー役割を強化する可能性
こうしたAIの助言は、個人のキャリアの軌道や生涯賃金に実際の影響を及ぼしかねない。柔軟性を好む女性(そして男性)もいるかもしれないが、性別だけを理由に、その人が柔軟性を優先すると決めつけることはできない。そうした決めつけは、「ユーザーが何を重要で、達成可能で、交渉に値するものと認識するかを形づくる」可能性があると研究者らは書いている。さらに、「AIが生成する助言は、ユーザーを異なるキャリアの軌道へと微妙に誘導する可能性がある」とも述べている。
問題は、女性が稼ぎ手としての役割から遠ざけられていることだけではない。男性がケア提供から遠ざけられていることでもある。女性は家庭での責任を優先すべきで、男性は収入を得ることに集中すべきだと想定することで、AIは男女双方の選択肢を制限する伝統的なジェンダー役割を強化するリスクがある。
さらに、ジェンダーに偏った給与推奨の問題もある。男性と女性がこの研究でAIが推奨した給与を目指せば、それも男女の賃金格差を固定化する一因になりかねない。
AIの大きな利点の1つは、個人に合わせた助言を提供できることだ。しかし、その助言がジェンダーステレオタイプに汚染されている場合、女性は別の情報源に相談することを検討する必要があるかもしれない。研究著者らは、キャリア助言にAIを使いたい女性に向けた戦略の提示には踏み込んでいないが、結果からは、一部の女性は同等の資格を持つ男性に対する推奨をAIに尋ねてみることを考えてもよいことが示唆される。



