スペースやイベントへのアクセスプラットフォームThe Modernistsの創業者メリッサ・デュワー氏は、事業がまだ草創期にあった頃、あるイベントの運営責任をインターンに委任した。
結果は散々だった。そのイベントは中止を余儀なくされ、ミスの代償として、開催で提携していた会員制クラブの会員資格を失った。
「失敗の原因は私にあった」とデュワー氏はこの大失態を痛い教訓として振り返る。「必要な監督や文脈の共有もないまま、ハイリスクで関係性に左右される仕事を渡してしまった。重要なパートナーシップを損ないかねないタスクを、まるでルーティンの事務作業であるかのように扱っていたのだ」
現在では、提携先、顧客、あるいは会社の信用に関わるものは、十分な支援と確認の機会を伴って引き継ぐか、そもそも引き継がない。彼女はひるむことなく、この経験を経てより賢明になり、委任を減らすのではなく、よりうまく委任するようになった。
デュワー氏はこう説明する。「インターンが成功できるように整えるべきであって、爆発しかねない案件を抱え込ませてはなりません。今では、何を完全に委任しても安全か、何については私が関与し続ける必要があるかが、はるかに明確になっています」
この話は、他人に仕事を任せるのに苦労しているリーダーたちを萎縮させかねない戒めの物語である。しかし、改善すべきリーダーシップのソフトスキルとして取り組むなら、委任は実際、最も効果的な生産性向上の手法の1つである。
「実行する人」は委任に苦戦しがち
経営コンサルティング会社DDIが世界のリーダー1万796人を対象に実施した2025年の調査では、燃え尽き症候群を防ぐ最も効果的なスキルとして委任が特定された。しかし、同社が7万人超の管理職候補者を評価して得た別の知見によると、強い委任能力を示した人は5分の1未満にとどまった。
DDIのCEOであるテイシー・バイハム氏は、「新興リーダーは『実行する人』から『委任する人』への移行に苦戦している」と述べる。幸いなことに、委任は伸ばすことのできるスキルだという。
何を委任すべきかを見極める方法の1つは、実行すべきタスクを「緊急度・重要度マトリクス」とも呼ばれるアイゼンハワー・マトリクス上に配置することだ。一般に、「緊急」だが「重要ではない」と分類されるタスクは、他者に引き継ぐことができる。また、自分に遂行する能力やリソースがないタスクは、自分のToDoリストから、必要なスキルを持つ誰かのリストへ移すべきである。
委任せよ、ただし丸投げはするな
しかし、デュワー氏や多くの創業者が苦い経験から学んだように、成功の鍵はすべての責任を手放さないことにある。観葉植物スタートアップSmartyPlantsのCEO、ベン・ビーバーズ氏は、委任と放棄の大きな違いを指摘する。自分の仕事を再配分する人は、ある程度関与し続ける必要があると彼は考えている。
彼は自分に3つの問いを投げかける。「その人には仕事をうまくこなすスキルがあるか。ほぼ常にある。そのスキルを自社のビジネスに適切に適用するだけの十分な背景知識があるか。たいていはないため、彼らの知識をキャッチアップさせるのはこちらの責任だ。そして、その人は常識を働かせるか。それは人によって異なる。つまり、導くためには、その仕事を自分でも十分に理解しておく必要があるのだ」
リーダーは、自身の期待値をより適切に管理する必要があるかもしれない。自分なら1時間で終えられたタスクを委任する際に、丸々1時間を節約できるとは期待しないことだ。関与することを前提にすれば、30分、あるいは45分は節約できるかもしれない。その時間の節約を1週間、1カ月、1年と積み上げてみれば、取り戻した時間の大きさに驚くだろう。
では、リーダーが自分で続けるべきタスクは何か。ビジネスを目標に近づけるものすべてである。それ以外はあなたの勤務時間に組み込むべきではないが、他の誰かの勤務時間には組み込まれるかもしれない。
定義できないものは委任できない
Working Betterのビジネス心理学専門家、イアン・グレン氏は、戦略と方向性の設定、そして明確に定義されていないものはリーダーが自分で握っておくべきだと勧めている。「定義できないものは委任できない」。そのような場合、彼は大きなタスク全体を委任するのではなく、プロジェクトを適切に理解するための最初の一歩を、チームメンバーとともに定義することを提案する。メンバーはその小さな目標に集中し、結果を報告したうえで、一緒に次のステップを決めればよい。
リーダーはまた、自分が本当に楽しんでいることのために余地をつくることも検討すべきだ。StartUpAndRise創業者でビジネス成長の専門家であるアリアナ・チェリート氏は、心から喜びをもたらし、今も情熱を持って取り組める仕事は手放さないようリーダーに助言している。
彼女はこう説明する。「従業員、パートナー、その他のステークホルダーを問わず、周囲の人々が、あなた自身がどこで生き生きとするのかを目にすることには、非常に大きな力があります。そのエネルギーは伝わります。企業文化の中に織り込まれ、他の人々にとって非常に大きな動機づけになり得るのです」
とはいえ、それはすべてを自分だけで抱え込むという意味ではない。実際にはその逆だ。「共有し、共有し、共有せよ。自分がしていることに人々を巻き込み、自分がそれをどう考えているのかを説明し、たとえ自分が深く関わり続けるとしても、他の人がそこから学べるようにすることだ」とチェリート氏は語る。
何よりも、事業のリーダーにとって高価値な時間を費やすべきではないことは、委任するのが賢明である。Time Etcが米国の起業家251人を対象に実施した2023年の調査によると、起業家は平均して週の労働時間の36%を、請求書発行、データ入力、事務用品の発注といった管理業務に費やしている。
しかし、自らを「専門家」レベルで委任できると認識している人は、同業者よりも健全な収益成長を遂げており、前年に利益率が上昇した可能性も高かった。それほどまでに、小さなタスクが課す代償は大きいのである。



