マーケティング

2026.11.04 09:13

AIのパラドックス、マーケティングで「人とのつながり」が価値を持つ理由

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私が2004年に会社を設立した当時、企業のマーケティング手法は今とはずいぶん違っていた。それ以来、テクノロジーは私たちの働き方のほぼすべての側面を変え、AIがその変化を加速させている。

当社もAIを積極的に取り入れ、業務プロセスの効率化、社員のサポート、そして最終的にはより良い顧客体験の創出にどう活かせるかを模索している。しかし、20年以上にわたる事業経験が私に教えてくれたのは、テクノロジーが変えられなかったものがあるということだ。人は、自分が理解され、価値を認められ、自分にとって最善の結果を真剣に考えてくれる誰かがいると感じたいのである。

そして、日常のやり取りがますます自動化されていくにつれ、こうした「人間らしさ」はこれまで以上に重要になると私は信じている。

効率は大切だが、体験のすべてではない

事業を営むなかで学んだのは、効率と顧客体験は必ずしも同じではないということだ。問い合わせに数秒で返信し、すべてのフォローアップを自動化することはできる。しかし顧客が「単なる取引相手」として扱われたと感じて去ってしまうなら、それは本当に何を達成したことになるのか。

当社には、イベントやキャンペーン、チーム向けのブランド入りグッズを求めて顧客が訪れることが多い。しかし、商品そのものが物語のすべてであることはめったにない。依頼の背景にある人、目的、状況を理解してこそ、会話は変わる。それによって当社のチームは、より適した商品を提案したり、潜在的な課題を見出したり、顧客が考えていなかったアプローチを提示したりできるのだ。

そうしたサービスは、耳を傾け、適切な質問を投げかけ、会話の相手にとって何が大切なのかを心から理解することから生まれる。AIは情報へのアクセスを速くし、より的確な提案を可能にしてくれる。しかしその真の価値は、単に顧客をプロセス上で早く通過させることではなく、社員がより思慮深い体験を届けられるよう支援することにあるべきだ。効率は、人間関係を置き換えるのではなく、人間関係のための余地を広げるものであるべきである。

デジタル化が進むほど、リアルな体験の意味は深まる

私はキャリアの大半を、プロモーション用グッズを通じて企業がオーディエンスとつながることを支援することに費やしてきた。そこから得られたのは、マーケティングを記憶に残るものにする要素とは何かという、貴重な視点である。

ブランド入りの商品は単なるマーケティングツールに見えるかもしれない。しかし思慮深く選ばれれば、それは誰かの日常生活の一部になりうる。毎日職場に持っていくドリンクボトル。新入社員にチームの一員だと感じさせるウェルカムギフト。関係を大切にしていると顧客に伝えるクリスマスプレゼント──。

商品自体も重要だが、それ以上に重要なのはその背後にある思考だ。実質的に同じマーケティング予算でも、相手を理解する時間をかけるだけで、まったく異なる体験を生み出した企業を私たちは数多く見てきた。

そしてこの教訓は、グッズの枠をはるかに超えて当てはまる。消費者が自動化されたメール、デジタル広告、AI生成コンテンツに触れる機会が増えるなかで、マーケターは自社ブランドが人にどのような感情を与えるかをより慎重に考える必要がある。時には、個人的な電話、手書きのメモ、心のこもった贈り物のほうが、別の自動メッセージでは伝えきれない何かを伝えられる。

これらはデジタルマーケティングの代替ではない。ブランド体験全体をよりパーソナルで、記憶に残り、意味あるものにする機会なのだ。

AIは「より多く」を生み出せるが、それは本当に必要か

AIについて私が最も関心を抱いているのは、創造性を支える可能性である。当社のチームは多様な業界を担当しており、それぞれに異なる顧客と課題がある。AIは不慣れな業界のリサーチ、クリエイティブな方向性の探索、アイデアの発展を効率的に支援してくれる。それによって社員は、そうしたアイデアに価値を与える「思考」により多くの時間を割けるようになる。

しかし私は、最もクリエイティブで見栄えがするものが常に最良の解決策とは限らないと学んできた。顧客が凝ったアイデアを持ってきても、彼らのオーディエンスや予算、意図する成果を理解しているからこそ、はるかにシンプルな提案をすることがある。

そうした提案を行うには判断力が求められる。最初のブリーフに疑問を呈し、その理由を説明し、時には顧客に対して「当初のアイデアは最も効果的な方法ではないかもしれない」と伝える覚悟が必要だ。

AIは選択肢を示してくれるが、どの選択肢が検討に値するかを見極めるには経験がものを言う。誰もが数百のアイデアを生成できるツールを手にする時代には、競争優位はより良い質問を投げかけられる者、健全な判断力を発揮できる者、そして人々に本当に響くものが何かを理解できる者へと移る、と私は実感している。

テクノロジーを人のために使う

私は、AIをシンプルな視点で見ることが有用だと考えている。それは、AIがどのようにすれば当社のチームがさらに優れた顧客体験を提供する助けになるのか、という視点である。

AIは反復的な事務作業を取り除けるか。商品情報へのアクセスを容易にできるか。チームメンバーがより速く正確に応答する手助けができるか。答えはいずれもイエスだ。しかし私は、テクノロジーが顧客との関係を特徴づける主役になることは望まない。顧客に覚えていてほしいのは、誰かが自分のブリーフを理解し、課題解決を助け、約束したものを届けてくれたという事実である。

AI導入を進める他の経営者にも、同様のアプローチを勧めたい。何かを自動化する前に、それが不要な作業を取り除くのか、それとも価値ある人間的なやり取りを取り除くのかを考えてほしい。両者には重要な違いがある。顧客は、基本的な情報を手動で取り出すのを待たされるべきではない。同時に、本当に必要なのが会話なのに、延々と続く自動応答をかいくぐらされるべきでもない。両者のバランスを取れるビジネスモデルこそ、最も効果的なものになると私は信じている。

20年の事業経験が裏付けた教訓

テクノロジーはこれからも変わり続け、企業もそれに合わせて変わっていかなければならない。しかし、長く続く事業を築くための基本は驚くほど変わらない。

言ったことは必ず実行する。顧客を理解する。社員を大切にする。問題が起きたら責任を取る。相手が仕事をしやすいようにする──。こうした原則は複雑ではないが、一貫して実践するには努力が必要だ。そしてどれほど自動化を進めても、これらを見失った企業を補うことはできない。

私はAIが仕事のあり方を改善する大きな機会をもたらすと信じているが、その最大の貢献はビジネスの人間的要素を置き換えることにはない。むしろ、そうした要素に集中する時間をより多く与えてくれることにある。マーケティングの未来は、AIを最も効果的に使う企業のものになるのではなく、テクノロジーに何ができ、人は何を違う形でできるかを理解し、両者を融合させて真に価値あるものを生み出せる企業のものになるだろう。

それこそが、私が最もわくわくしている機会である。

(forbes.com 原文)

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