これは正しい分析だ。米シンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のレーチェル・ジエンバ上級客員研究員は、これら2つの戦争は燃料市場で互いに影響し合っているものの、特に中東からの供給は「正常な状態には程遠い」と指摘した。
イランとの紛争は、米国が自ら選択したことだ。その結果についてウクライナを非難するのは責任転嫁に過ぎず、今のところ、その手は通じていない。米AP通信と米シカゴ大学NORC公共問題研究センターが9月下旬に実施した世論調査では、米国民の3分の2近くが「物価高はトランプ大統領の政策が招いたものだ」と回答。同大統領のイランへの対応を「支持しない」と答えた人は7割を超えた。
筆者はウクライナとロシアの両国に滞在したことがある。ウクライナで出会った人々の多くは、ゼレンスキー大統領の登場を「新鮮な風」として捉えていた。第1次政権時代のトランプ大統領が2019年、有力な対立候補だったジョー・バイデン前副大統領(当時)に対する捜査を公表するようゼレンスキー大統領に圧力をかけていたことが公になった際、筆者はウクライナに滞在していた。その圧力が現実のものであることは誰もが知っていた。ゼレンスキー大統領は、そうした問題には関わりたくないと繰り返し述べていた。
その頃、筆者は同大統領の報道官だったユリヤ・メンデリと知り合った。同報道官はその後、ゼレンスキー大統領に反旗を翻し、同大統領を激しく批判しながら、ウクライナ侵攻の即時終結を訴えるために世界中を駆け回っている。ゼレンスキー大統領は9月、ロシアのプロパガンダを拡散しているとして、メンデリ元報道官を制裁対象に指定した。一方、同元報道官は、ゼレンスキー大統領は平和を訴える者を誰でも標的にしていると非難した。メンデリ元報道官とは今でも友人関係にある。多くのウクライナ人と同様、同元報道官も長期化する戦争によって心身ともに限界に達しているのではないかと思う。ウクライナ人は疲れ切っているのだ。
しかし、それはウクライナ国民が投票で決着をつけるべき議論であり、米国の大統領がロシアとの電話会談で決めるような問題ではない。ロシア政府の予算の大部分は石油と天然ガス収入によって賄われており、軍事費は現在、歳出に占める割合が過去最大を記録している。米国が輸出を解禁したロシアの貨物が、ウクライナの都市に降り注ぐミサイルの資金源となっているのだ。
軽油の価格が下がるのは、ウクライナが自国の防衛をやめる時ではなく、ホルムズ海峡を通る燃料輸送が再び自由に行われるようになる時だ。それまでは、米国民はイラン紛争の代償として国際価格を支払い続けることになる。ウクライナを非難したところで、状況は何も変わらない。ロシア産燃料の輸出解禁は同国の戦争資金を増やすだけで、米国の農家やトラック運転手が支払う価格を下げる効果はほとんどない。


