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2026.11.03 10:22

誰もが求める「AI幹部」、しかし具体的に定義できる者はいない

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少し前、筆者の経営するエグゼクティブ・サーチファームに、あるクライアント候補が「AIに精通した最高経営責任者(CEO)」の採用支援を求めてやってきた。それが提示された要件だったが、なぜそれが必要なのか尋ねても、具体的な理由は返ってこなかった。クライアントの頭のなかでは、理由の説明など不要だと思われていたからだ。

こうした依頼は、今や業界や職能を問わず飛び込んでくるようになっており、その背後にあるパターンは驚くほど一貫している。クライアントは技術系人材の獲得競争が激しいことを知っている。自分たちが目指す水準から遅れていることも自覚している。だが分からないのは、面接で目の前に座る人物に求められる「AIの専門性」とは、実際にどのようなものであるべきかという点だ。

この進化する役職の実態を理解するため、筆者らは最新の委任状説明書(プロキシ・ステートメント)や臨時報告書などの米国証券取引委員会(SEC)の全文開示書類を検索し、「最高AI責任者(CAIO)」およびそれに類する正式な役職名を調査した。その結果、取締役会が採用活動においてこうした専門性を求める頻度に対して、正式に役職名が与えられているポジションの数は極めて少ないことが判明した。このギャップ自体が注視に値する。AIリーダーシップに対する需要は、それが何を意味するのかという共通認識の形成を大幅に先行しており、そのギャップを埋めるための追加の質問を投げかける者はほとんど存在しない。

AIにおける専門性の4つのレベル

採用要件にAIが浮上した際、筆者らはクライアントに必ず1つの質問を投げかける。「この要件が満たされたとみなすには、候補者が実際に何を成し遂げている必要がありますか」と。

この質問をすると、ほぼ例外なく相手は沈黙する。大半のクライアントは、これまでに「AIの専門性」を具体的な行動や成果に落とし込む必要に迫られたことがないからだ。誰もそれを求めてこなかったためである。だが、この沈黙こそが真の要件定義が作成される瞬間である。沈黙の後に語られる内容は、当初提示されたアバウトな要望よりも、はるかに具体的で有用なものになるのが常だ。

こうした対話を重ねるなかで、あるパターンが浮かび上がってきた。筆者らはAIの専門性を4つのレベルに分類して考えている。なお、これは経営幹部の優劣を示す格付けではなく、候補者が実証できる「根拠のレベル」として捉えることを推奨する。

レベル1:AIキュリアス(関心層)
経営幹部が個人的にツールを使用し、知識に基づいた会話ができる程度に最新動向を把握している。このレベルには業務上の実績は伴わず、純粋な認知と関心にとどまる。

レベル2:AIプロフィシエント(習熟層)
経営幹部がこうしたシステムによって自身の働き方を変化させている。意思決定において日常的にAIを活用し、その結果として具体的にどのような手作業をやめたのかを説明できる。

レベル3:AIアプライド(実践層)
特定の部門にAIを導入し、その導入成果に対して責任を負ってきた。何を実行し、いくら費用がかかり、途中で何が破綻し、最終的にどのようなリターンが得られたかを具体的に語ることができる。

レベル4:AIフルーエント(精通層)
モデルの分類、推論コストの発生場所、内製か購入かの判断、必要なデータ要件の実態、さらには「そもそもAIで解決する価値のない課題」の判別を含め、ツール自体の背景にある経済性を理解している。

どのレベルが適切かは、自社のその役職が実際に何を判断しなければならないかに完全に依存する。たとえば、AI関連の設備投資を承認する最高財務責任者(CFO)には、予測されるリターンが妥当かどうかを判断する仕事であるため、レベル4が求められる。一方で、CEOには全般的にレベル3が必要であり、真のレベル4の判断力は、会社の資本配分において真に重要な1つか2つの決定にのみ確保されていれば十分な場合が多い。

現在、あらゆる企業が異なる方法でAIを活用している。そのため、要件定義は一般的な「AIの専門性」というカテゴリーに対してではなく、自社の実際の意思決定に合わせて作成されなければならない。

採用活動を開始する前に問うべきこと

面接で以下のいくつかの質問を直接投げかけることで、これらのレベルを明確に区別できることがわかっている。

1. 過去18カ月間で、自身が手作業で行うのをやめた業務は何か。
この質問はレベル1とレベル2を区別する。実際の導入実績がなければ、説得力のある回答をすることは難しい。

2. 自身が導入した取り組み、そのコスト、そして実際に得られたリターンについて説明してほしい。
この質問はレベル2とレベル3を区別する。ここでの曖昧な回答は、候補者が責任者としての当事者意識ではなく、単なる「知識や親しみ」を語っていることを示す最も典型的なサインだ。

3. 推進しないと決断したAIプロジェクトは何か。また、その理由は何か。
この質問はレベル3とレベル4を区別する。「何を作らないか」という判断には、一見魅力的に見える案件から撤退できるほど背景にある経済性を十分に理解していることが求められるからだ。

4. この投資が実際に成果を上げたかどうかを、1年以内にどのように判断するか。
この質問は、候補者が単なる導入の有無ではなく、投資対効果の視点で考えているかを試すものだ。

筆者らが最近支援した業務用HVAC(空調)関連のクライアントでは、このプロセスを経て曖昧な要望が具体的なものへと昇華された。必要とされていたのは、自身の業務でこれらのシステムを日常的に使いこなせるだけでなく、AIによる分析を需要予測に直接結びつけることができる幹部だった。それこそが本物の要件定義である。単なる「AIの専門性」という言葉自体には何の具体性もない。

この取り組みで最も価値のあるプロセスは、採用活動が始まる前に行われる。採用する幹部が最初の2年間でAIに関して下さなければならない「3つの実際の決定事項」を書き出してみるといい。必要な専門性のレベルはそれら3つの決定から自然と導き出され、要件定義は自ずと完成するはずだ。

真に必要なものを言語化する

AIリーダーシップに対する需要は、今後もあらゆる職種、あらゆる業界の採用現場で生じ続けるだろう。いま真に欠けているのは、それを満たす要件に関する共通の定義である。それも、取締役会が職務記述書(ジョブディスクリプション)に落とし込むことができ、候補者を公平かつ正当に評価できるほど具体的な定義だ。その定義がなければ、あらゆる採用活動は結局同じ曖昧な単語に頼ることになり、面接官が誰かによって異なる暗黙の基準で候補者が測られることになってしまう。

筆者は、その共通定義に向けた一助として、これら4つのレベルを提案している。ある役職に実際に必要なレベルを明確に言語化できる取締役会やCEOは、そうした人材の獲得競争において、すでに市場の大半を一歩リードした状態で採用活動に臨むことができる。なぜなら、他の取締役会はいまだに明確な基準ではなく、単なる「キーワード」を軸に職務記述書を作成している段階なのだから。

(forbes.com 原文)

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