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2026.11.03 09:14

広告代理店に必要なのは「新たなAIツール」ではない。優れた「レバレッジ」だ

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グーグルで20年間にわたり広告代理店と仕事をしてきた私は最近、予想もしていなかったキャリアチェンジをした。データおよびAI企業への転職だ。理由はシンプルだった。自律型AI(エージェンティックAI)は、広告の仕組みを根本から改善する一生に一度の機会をもたらすと確信しており、広告代理店やブランドがその領域に到達するのを支援したいと考えたからだ。

しかし、私はテクノロジーの変遷を数多く見てきたことで、機能や能力の高さだけで普及が進むわけではないことも知っている。現在、広告代理店とのパートナーシップを構築しようとしている人に向けて、実際に何が効果的なのかについて私が学んだことを共有したい。

広告代理店にあるのは「活用可能なインテリジェンス」ではなく「過剰なツール」

ほぼすべての広告代理店を訪れてみれば、巨大化・複雑化したテックスタックを目にするはずだ。一方で、最も重要なクライアントデータ、すなわちどの顧客が最も価値が高いのか、どのリード(見込み客)が実際にコンバージョンに至ったのか、どのキャンペーンが真の収益をもたらしたのかといったデータに簡単にアクセスできる環境は、ほとんど整っていない。

こうしたデータは通常、クライアントのシステムのどこかに存在している。問題は、それをキャンペーンが運用されるプラットフォームへ、継続的に、しかも何カ月ものエンジニアリング作業なしに取り込むことだ。その結果、有能な人材がデータの移動や分断されたシステムの管理に多くの時間を費やし、戦略に割く時間が少なくなっている。

代理店に販売するのであれば、さらに別の機能を前面に出すべきではない。彼らのチームに時間を取り戻させ、より優れたインテリジェンスを手元にもたらす方法を前面に出すべきだ。

定着するかどうかはプロダクトの質だけでなく「信頼」で決まる

グーグル時代に得た最も明確な教訓の1つは、テクノロジーの導入には、ブランド、代理店、プラットフォームの間に信頼、教育、足並みの一致が必要だということだ。たとえ優れたプロダクトであっても、いずれかの当事者が理解していない、あるいは信頼していなければ、導入は停滞する。

これは、代理店業界におけるビジネスデベロップメント(事業開発)が、売ることと同等に「教育すること」を意味する。代理店は、新たな手法が自社のプランニング、アクティベーション、計測のプロセスにどのように適合するかを理解する必要がある。ブランド側は、自社の顧客データが責任を持って取り扱われているという確信を必要としている。そしてプラットフォーム側は、あなたの提供するツールが顧客をより成功させているという実感を得る必要がある。

この3者の足並みがそろえば、導入は一気に加速する。1つでも欠ければ、どれほど優れたパイロット運用であっても成果にはつながらない。

AIは作業を変えるが、「判断力」の価値は変えない

代理店のリーダーたちから最もよく受ける質問は「AIエージェントは自社のチームに取って代わるのか」というものだ。私の答えはこうだ。AIは業務、特に反復的な実行や分析作業を変革する。しかし、代理店が価値を生み出しているのは、戦略、判断力、クリエイティビティ、そしてクライアントのビジネスに対する深い理解を通じてだ。それらが失われることはない。

プラットフォームによる実行作業の自動化が進むにつれ、優位性は自動化できないもの、すなわち独自データ、ブランドのコンテキスト(文脈)、戦略、そしてクリエイティブな判断力へと移行する。最も強力な代理店は、AIを活用して自社の専門知識をより迅速かつ大規模に適用していくはずだ。

パートナー企業にとって、このインサイトは非常に重要だ。自社のテクノロジーを、優秀な人材の代替品としてではなく、彼らを支援する「レバレッジ(テコ)」として位置づけることだ。自社の役割を脅かすツールに対して代理店は抵抗を示すが、自社の人材をクライアントにとってより価値のある存在にしてくれるツールであれば、喜んで後押しする。

単一クライアントではなく、多数のクライアントを前提に構築する

代理店は、単一のクライアントのためだけにテクノロジーを購入することはない。数多くの顧客アカウント、業界、チーム構造に横断的に対応できるソリューションを必要としている。クライアントごとに個別開発作業が必要になるような導入モデルは、実際の代理店の現場では通用しない。

私が目にしてきた中で最も成功している代理店とのパートナーシップは、個別対応の導入ではなく、再現可能なモデルに注力している。提案を行う前に、自社が同席しなくても代理店のチームがその手法を10社のクライアントへ水平展開できるかどうかを自問してみてほしい。もしできないのであれば、モデルを見直すべきだ。

「相互運用性」を強みにする

代理店は主要なあらゆる広告プラットフォーム上で業務を行っており、クライアントのデータも多種多様なシステムに分散している。単一のエコシステムに抱え込むようなソリューションは、摩擦と反発を生む。

中立的で相互運用可能なデータインフラは、マーケティングの未来においてますます不可欠な存在となっている。代理店が最も信頼を寄せるパートナーとは、選択を迫るのではなく、クライアントのインテリジェンスをエコシステム全体で一貫して活用できるよう支援する企業だ。

実践的なところから始め、拡大する

大きな変化は一様には進まない。すでにAIを積極的に活用・実験している代理店もあれば、まだ基礎を整理している段階の代理店もある。パートナー企業には、長期的なビジョンと、今すぐ価値を生み出す実用的な手段の両方を提供することが求められる。

私自身の仕事においては、まず「耳を傾けること」から始めている。それは、各代理店が実際に何を必要としているのかを理解し、ファーストパーティデータとAIが即座に効果をもたらす具体的なクライアントのユースケースを特定し、初期の成功事例(スモールウィン)をベースに成果を積み上げていくことを意味する。

今後の機会

自律型AIは広告業界を再編するだろう。しかしその価値は、マーケターが自社の顧客データ、ビジネスの文脈、そして目的にAIを連携できるかどうかにかかっている。代理店はその課題の中心に位置しており、ブランドが責任を持ってAIを導入できるよう支援できる独自の強みを持っている。

事業開発を担当するリーダーにとって、進むべき道は明確だ。代理店の役割を尊重すること。データとアクションの間の摩擦を取り除くこと。そして優秀な人材がより成果を出せるようなパートナーシップを築くことだ。これを実践できれば、単にテクノロジーを売るだけでなく、業界のあり方そのものを再定義する一助となることができるはずだ。

(forbes.com 原文)

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