経営・戦略

2026.11.03 08:19

「事業の成長に置いていかれない」ために起業家がすべきこと

Adobe Stock

Adobe Stock

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

2017年6月、ウーバー(Uber)のCEOを退任するわずか数日前、共同創業者のトラビス・カラニックは従業員に宛ててこう書いた。「私たちがUber 2.0に取り組むのであれば、私もまた、この会社が必要とし、皆さんにふさわしいリーダーになるために、Travis 2.0に取り組む必要がある」

起業家が自分自身の「2.0」版になるとは、何を意味するのか。事業が成長すれば、創業者に求められるものもそれに伴って大きくなる。事業を立ち上げるために必要だった知識、スキル、判断力だけでは、次の成長段階へ導くには十分でない可能性がある。

ここで重要になるのが、起業家自身の成長である。事業の成長に合わせて起業家が成長し続けなければ、その能力がやがて成長の制約になり得る。自らが、事業の前進を妨げる障害そのものになってしまうのだ。

ハーバード・ビジネス・スクール元教授のノーム・ワッサーマンが米国のスタートアップ212社を調査した研究によると、会社が株式公開(IPO)を果たす時点でCEOとして残っていた創業者は25%未満だった。創業者が退任する理由はさまざまだが、この結果は示唆に富んでいる。調査対象となった創業者の大半は、株式公開という節目に達した時にはもはや自社を率いていなかったのだ。

事業とともに成長する

事業を立ち上げた起業家と、それを成功裏に成長させる起業家が同一であることはまれだ。人物としては同一であっても、事業が成長するにつれて、より能力の高い自分へと進化しなければならない。

多くの起業家は、正式なビジネス教育や豊富な経験を持たないまま事業を立ち上げ、直感に頼り、走りながら学ぶ。事業が複雑になるにつれ、従業員や財務の管理から、ステークホルダーとの協働、より重大な意思決定に至るまで、新たな責任に直面する。

経験は強力な教師になり得るが、成長を保証するものではない。従業員を管理したり事業を運営したりした年数が長いからといって、必ずしも優れたマネジャーや財務上の意思決定者になれるわけではない。起業家は、自社が必要とする能力を身につけるために、意識的に努力する必要もある。

組織をつくる

一人起業家(ソロプレナー)であれば、業務運営からマーケティング、財務、カスタマーサービスに至るまで、すべてを自分で行うことに慣れているかもしれない。しかし事業が拡大すると、一人ですべてを管理するキャパシティはなくなる。従業員を管理した経験がない起業家にとって、チームの構築には新たなスキルが必要となる。採用、育成、権限移譲、フィードバックのやり取り、従業員の動機付け、そしてパフォーマンス管理などだ。

だが、こうしたスキルの習得は移行の一部にすぎない。従業員が自分の基準を満たせないと感じると、仕事を取り戻して自分でやってしまう起業家もいる。この課題を克服するには、委任する自信、従業員の判断を信頼する姿勢、そして仕事のあらゆる面を細かく指示するのではなく、自律性を与える力を育てる必要がある。

優れたリーダーであることは、あらゆる面で従業員より優れていることを意味しない。卓越した人材を見つけ、その人たちが最も得意とすることを発揮できるよう力を与えることを意味する。多くの場合、彼らはあなた自身よりもうまくそれをやってのける。そうすることで、チームの総合的な強みを活用し、事業はあなた個人の能力を超えて成長できる。

財務能力を高める

多くの起業家は、財務知識が乏しい状態で事業を立ち上げ、時には財務管理の基礎的な理解すら欠いていることがある。商品の価格設定や予算管理から、株式の理解や投資条件の交渉に至るまで、彼らは実践の中で学んでいくことが少なくない。

事業が成長するにつれ、財務上の意思決定はますます複雑になり、ミスによる損失も大きくなる。経験を通じてこうした能力を身につける起業家もいれば、事業を長年運営した後でも事業に必要な財務知識の習得に苦戦する起業家もいる。そうした知識がなければ、会社に深刻な損害を与えかねない意思決定を下すリスクを負うことになる。

意図的に財務知識とスキルを伸ばすことで、起業家はこうした課題により良く備えることができ、大きな代償を払うミスを回避できるようになる。

ベンチャーキャピタルの出資を受けたものの失敗したスタートアップに関するCBインサイツ(CB Insights)の2026年の分析によると、70%が資金を使い果たしていた。資金切れは根本的な原因というより他の事業課題の結果であるケースが多いものの、この分析結果は、資金不足の予測、財務リスクの管理、そして財務安定性の維持における財務能力の重要性を際立たせている。

専門スキルを超えて:起業家としての判断力とマインドセットの育成

起業家の成長は、技術的なスキルの習得にとどまらない。事業が成長するにつれ、起業家はより優れた判断力を養う必要がある。誰を採用すべきか、どの機会を追求すべきか、いつ断るべきか、そしてどれほどのリスクをとるべきかを見極める力だ。また、対人スキルを強化し、ステークホルダーとの関係を構築し、他者が見落としがちな新たなトレンドや機会を見出す能力を開発しなければならない。

同様に重要なのが、マインドセットの転換だ。事業が成長するにつれ、起業家は日々の業務管理から脱却し、自社の未来を形成する上でより大きな責任を負うことを学ばなければならない。そのためには、目の前の業務から一歩引き、戦略的に思考し、長期的な成長を支える意思決定を行うことが求められる。業務上の責任に引き続き注意を払う必要があるかもしれないが、主な焦点を戦略的な方向性の提示へと徐々にシフトさせていく必要がある。

起業家としての成長を意識的なものにする

起業家は、単に経験を積むだけでなく、自身の成長に対して意図的である必要がある。現在の能力と、将来事業が必要とする能力とのギャップを認識しなければならない。

すべての起業家が定期的に自問すべき問いがある。「自分の事業の次の段階において、自分がまだ学んでいない何が求められるのだろうか」

この問いを投げかけることで、起業家は次の段階に備えるために必要な知識、研修、メンター、アドバイザー、経験を主体的に求めることができる。

結局のところ、起業家の成長とは、単に新しいスキルを身につけることではない。より優れた起業家になること、あるいはトラビス・カラニックの言葉を借りれば、自分自身の「2.0」になることなのだ。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事