アーロン・ソーキン監督の新作映画『The Social Reckoning』は、フェイスブック(現メタ)によるプラットフォームの有害性を告発した内部告発者の闘いを描いた作品だ。映画の中にはマーク・ザッカーバーグが登場し、弁護士やアドバイザーに囲まれながら自身が立ち上げた会社を守ろうと奮闘する。しかし、この物語には異様なほど存在感を欠く人物が1人いる。シェリル・サンドバーグは一切登場しないのだ。
サンドバーグは、映画で描かれている全期間を通じてフェイスブックの最高執行責任者(COO)を務めていた。彼女は、ザッカーバーグがわずか23歳だった2008年に入社し、有望なSNSに過ぎなかった同社を歴史上最も成功した企業の1つへと成長させるために14年間を捧げた。マネジメントのカルチャーを構築し、プロダクトが世界中の何十億人もの人々に届く企業の舵取りという途方もない課題において、ザッカーバーグを支え続けた。
2022年にサンドバーグが退任を発表した際、ザッカーバーグは異例なほど個人的な感謝のメッセージを公開した。彼は、会社経営のノウハウを教えてくれたのは彼女だと称えた。私生活の重要な局面で自分を支えてくれたことに感謝を述べた。そして、彼女を類まれなリーダーであり、パートナーであり、友人であると呼び、2人のパートナーシップは常にビジネス以上の深いものであったと語った。また、別の幹部にただ置き換えることなどできないとも認めた。サンドバーグは、組織図では到底表現できない特別な領域を彼の人生において占めていたのだ。
シェリル・サンドバーグはフェイスブックのCOOだった。しかし、それ以上に重要なのは、彼女がマーク・ザッカーバーグの「右腕」であったことだ。
「右腕」とは何か
あらゆるリーダーには、成功を支えてくれる人材が必要だ。異なる能力や視点をもたらす同僚や、決定を実行に移せる有能な役員が必要となる。しかし、それらをはるかに超える特別な関係性が存在する。「右腕」とは、リーダーのビジョンや意図を熟知し、そのリーダーが自身の役割をより適切に果たす手助けができる人物のことだ。リーダーがどう思考し、何を最も重要視しているかを理解している。歳月を経て、彼らはリーダーの意思決定力や実行力を拡張する存在となっていく。その役割は「チーフ・オブ・スタッフ(幕僚長)」という明確な肩書を持つこともあれば、役職にかかわらずその機能を果たしている場合もある。
右腕の存在は、リーダーが成し遂げる成果に並外れた違いをもたらす。彼らは必要なことを察知し、リーダーに代わって意思決定を下す。どの問題にリーダーが関与すべきで、どの問題ならリーダー抜きで解決できるかを理解している。人々をつなぎ、アイデアを実行に移し、組織がリーダーの目指す方向性を理解できるよう手助けする。彼らの最も重要な仕事のいくつかは実に静かに行われるため、他の誰もその実績に気づかないほどだ。
優れた右腕は、極めて不足しがちな視点を提供することができる。リーダーの権力が強まるにつれ、周囲の人々は発言に慎重になる。悪いニュースはオブラートに包まれ、異論はトップに届く前に消え去る。右腕は、リーダーに現場で実際に起きていることを伝えることができる。そしていつしか、CEOと右腕の間には、意見の相違が関係性を脅かすことはないとわかっているからこそ、異例なほど率直に話し合える共通の理解が生まれる。



