銀行の経営幹部ポストが空席になると、通常は市場を調査するか、エグゼクティブ・リクルーターに依頼し、適任の銀行員を探すのが一般的だ。しかし、その慣習を捨て、業界外から人材を採用する銀行が現れている。
Bank Slate Consultingは2025年初頭以降、米国の銀行および信用組合における1300件以上の幹部人事や昇進を追跡してきた。銀行はますます自業界の枠を超えて人材を探すようになっており、テック企業、小売業、コンサルティング、その他の隣接分野から経営幹部を迎え入れている。これは、歴史的に内輪で完結してきたエコシステムにおいて注目すべき変化だ。
優秀な外部人材がどこから来ているかに注目する
たしかに、銀行同士の人材採用は依然として主流であり、銀行特有の経験よりも根本的なスキルが重要となる職種でさえそうだ。しかし、この傾向に逆らう大手金融機関は、特にテック関連の職務で真の能力を見出している。
たとえばウェルズ・ファーゴは、生成AIやエージェンティックAIに携わっていたアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の人材をAI製品・ソリューション部門責任者として迎え入れた。シティグループは、グーグルのコア開発者エンジニアリング部門からCIOを採用した。いずれの場合も、銀行経験は重視される資格ではなかった。
この傾向はテック分野にとどまらない。ケンタッキー州のリパブリック・バンク・アンド・トラストは、KFCから最高人事責任者を、ウォルマートからCMOを採用した。アラバマ州のリージョンズ・バンクは、AT&Tの人事担当役員を最高人事責任者として迎え入れた。USAAは、自社のマーケティング部門を率いる人材として、サムズ・クラブのCMOを採用した。
いずれのケースでも、全国規模の小売業やホスピタリティ企業が顧客体験、ロイヤルティ、サービス提供をどう捉えているかを熟知した深い消費者ブランドの経験が、銀行業の経歴という必要条件を上回ったのだ。
他業界から学ぶ
特にホスピタリティ業界のプロフェッショナルは、顧客をリアルタイムで読み取り、その場で問題を解決する方法を熟知している。これはまさに支店やコールセンターの職務内容そのものだ。ホテルのフロントデスク・マネージャーと銀行の支店長は、業界モデルが異なるだけで同じ台本で動いている。
採用候補を同業他行のみに限定している銀行は、従来の業界思想に縛られた、縮小しつつある人材プールをめぐって争っているに過ぎない。一方、ホスピタリティ、小売、テックの各業界は、銀行が解決しようとしている課題を別の領域で既に解決した実績を持つ人材をスカウトしているのだ。
組織の記憶や規制当局との関係性から最も継続性が重視されるはずの最高リスク責任者(CRO)の役割においてさえ、意味のある外部採用が見られる。外部から採用されたCROの多くは銀行や信用組合の出身ではなく、コンサルティング会社、法律事務所、さらには州の銀行監督当局から登用されている。リスク管理のリーダーシップにおいてそれほどの外部視点を受け入れられるのであれば、成長志向の役職において探索範囲を広げるべきだという主張を拒む理由は見当たらない。
銀行業界の経験を完全に捨ててはならない
以上の議論は、銀行経験が重要な分野でもそれを完全に放棄すべきだと主張しているわけではない。コンプライアンスや業務運営のリーダーシップは、外部からは再現が難しい組織的知識から依然として恩恵を受ける。しかし、成長、テクノロジー、マーケティング、顧客体験を中心とする職務については、採用を銀行業界内に限定すれば、その時点で選択肢は狭められている。そうした採用活動は、自行に欠けている視点をもたらす可能性が最も高い候補者を除外してしまうリスクがある。
外部からの人材は「これまでずっとこうしてきた」という発想に縛られていない。だからこそ、こうした採用は銀行の見通しを改善しうる。取締役会は視野を広げ、業界とその進む方向について、より俯瞰的な見方を取り入れるべきだ。



